第19話 公認


 あたしが教室に駆け込んできた直後、朝のホームルーム開始を告げる本鈴が鳴る。が、教室の騒がしさは相変わらずだ。教師など、生徒に規律を強制する存在が教室に現れない限り、チャイムはただ特定の時刻の到来を告げるアラームと同じで公然と無視される。中等部長(中等部の校長のことで、森本学園ではこう呼ばれる)や教頭からプリントを受け取っているのに、あたしたち学級委員に渡さず3日も放置しているようなズボラな杉本先生が、チャイムが鳴るまでにきちんと来たためしはなく、かわいそうなことに、今日もチャイムは2-Cの生徒全員に無視されている。

 「志織、あんたどうすんの? この展開」

 「どうって、どうもしないけど」

 利奈の問いに、あたしは努めて平静を装いながら答える。だが、内心は違った。自分では安達の前で「あたしたち、何も悪いことなんかしてないんだから、堂々としなさい」なんて強がってみたけど、完全な不意打ちで予想外の展開だった。何よりも事が公になるのがあまりに早すぎて、このままあいまいな関係を続けるつもりだったあたしの計画は打ち砕かれた。近い将来、何らかの形で態度をはっきりさせなければ周囲が納得しないし、安達のことも傷付けてしまうことになる。

 「困ったな。どうしよう」

 あたしは思わずつぶやいた。ふと、教室の中を見渡すと、安達がやっぱり、周りの男子に茶化されている。

 「おい、安達。お前、マリー・アントワネット様のこと、好きなの?」

 「好きとかそう言うんじゃ……」

 「じゃあ、なんで一緒に喫茶店なんかに行ってるんだよ?」

 「それは、誘われたから、なんとなく……」

 「お前は、好きじゃない相手からでも誘われたら行くのかよ?」

 安達は、他の男子にちょっと詰め寄られただけで答えに窮してしまい、下を向く。やれやれと思ったが、無理もなかった。「あたしに強く誘われ、断れなかった」以外の理由が安達にないことはわかっていたからだ。もともと意志が弱く、流されるようについてきただけの安達がその質問に答えるのは無理に違いなかった。

 ちょうどそのとき、杉本先生が教室に入ってきた。「ホームルーム始めるぞー」とのけだるい声に、生徒がいっせいに席に着く。安達が答えに窮したちょうどそのときに入ってくるなんて、いいタイミング! あたしは、ズボラでいい加減な杉本先生に初めて感謝した。

 授業中は、余計な雑音から逃れられるありがたい時間だ。友達はあたしが予習も復習も大してしているように見えないらしく、「あんたって何で勉強もしないのにそんなにいつも成績いいのー」なんて聞かれたりする。そのたびに失礼な奴だと心の中で毒づきながら、笑ってごまかす。実際は、授業中に雑念を起こさずちゃんと聞き、予習も復習もちゃんとしているが、それを人に見せないようにしているだけだ。授業中に寝てばかりいる人に、「勉強しているように見えないのに成績がいいなんておかしい」などと言われる筋合いは、これっぽっちもなかった。

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 「ねえ、志織。何回も聞いてゴメンなさいだけどさ、どうすんの? 安達とのこと」

 昼休み。いつもなら心地よい屋上でお昼を食べるあたしたち3人組だが、今日はあいにくの雨模様だった。仕方なく、教室の利奈の席を挟むように机を寄せ合い、両隣にあたしとゆっきーが陣取ってお昼を食べる。雨の日はこれが基本スタイルだ。

 あたしが陣取っている利奈の隣は、安達の数少ない友達、広瀬渡(ひろせ わたる)の席だけど、気にせず座る。気の置けない仲良し3人組で食べるお昼に勝るものはなかった。広瀬は安達ほどではないが気が弱く、あたしが広瀬の席を占拠しても今まで何も言われたことがない。お互い優しい性格のためか、安達とは気が合うようだった。オタク気質で、アニメや漫画が好きなこともあって、広瀬は漫画部の副部長だった。

 「どうって、どうもしないけど」

 考えのまとまらないあたしは、朝とまったく同じ答えをする。

 「どうもしないじゃ、収まりがつかなくね? って、あたしは言ってんだけどさー」

 利奈が、つまらなさそうにコギャル言葉で返す。

 「私もそう思うよ、志織ー。ここは、安達くんを男子の友達ってするかー、彼氏として公認にするかー、なんでもないよって言って全部振り出しに戻しちゃうかー、はっきりしないといけないんじゃない?」

 「それはわかってんだけどね」

 今度は、ゆっきーが勝手に選択肢を3つに絞って迫ってくる。実際、その3つ以外の選択肢があるとは思えないが。

 「でもさ、今ゆっきーが言った3つのうち、最後は今さらあり得なくね? 今、志織と安達は学級委員なんだよ。全部振り出しなんてさー」

 「そうだねー。だったら、彼氏公認か友達か、どっちかだねー」

 「でも、友達ったって、あたしたちが3人でスイーツ食べに行くのと違うんだからな。普通、友達だからってだけで、男子と喫茶とか行くか?」

 当事者のあたしをよそに、利奈とゆっきーは適当なことを言っている。

 「もう! 利奈はあたしと安達を公認にしたいわけ?」

 あたしがそう言った瞬間、クラス中の視線があたしに注がれるのがわかる。しまった、今日は屋上じゃなく教室だったんだ。もっと小さな声で話さなきゃ、と思ったが、手遅れに近かった。ふと、教室の中を見渡すと、みんな、聞いてない振りして、しっかりあたしたち3人組の会話に耳をそばだてている。いつもなら屋上で誰にも聞かれることなく話せるのに、今日に限って、この雨が恨めしい。

 「いっひっひ。志織、でっかい声出して、自滅したねー」

 「あーもう、うるさいうるさい!」

 利奈が意地悪い笑みを浮かべる。こういうときの利奈の笑みはとてもサディスティックだ。利奈は幼稚園から恋愛経験があると豪語している。本当のことはわからないが、少なくとも恋愛に関しては、あたしよりはるかに先輩であることは確かだった。

 「うるさいって言ってもさー、志織、もうあんたたち、学園新聞にでっかく載っちゃって、学園中が知ってるんだよ。今さらあたしと安達はただの友達です、なんて言って、誰が信じると思ってんだよ?」

 利奈が、相変わらずの意地悪な笑みを浮かべながら追及してくる。そういえば、「カルチェ・ラタン」の乃亜さんも、安達をあたしの彼氏だと信じて、全く疑っていなかった。あたしと安達が、もうすでに立派な恋人同士に見えるのだとしたら、深い考えもなく、その場の勢いで安達を喫茶店に連れて行ったあたしの行動は軽率すぎたのかもしれない。だが、事態がここまで進んだ以上、後悔も手遅れに近かった。

 「一番肝心なこと聞くけどさ、志織は、安達のこと、どう思ってんの?」

 うっ……。あたしは言葉に詰まる。みんなのいる前でこんなこと聞くなんて、これじゃあ公開裁判じゃない?

 「それを、みんなのいるここで聞くかねー、普通」

 「学園新聞に載っちゃったことを、今さら陰でこそこそ聞くほうがおかしいじゃん。いい加減あきらめなよ、志織」

 あたしはどう答えていいかまったくわからなかった。あたしのそんな顔を見かねたのか、利奈が言う。

 「あんたさー、生徒会や学級委員の仕事してるときはメチャクチャ優秀なのに、自分のことになると、びっくりするくらい鈍感でダメだよね。志織、安達からなんか“サイン”みたいなものはなかったの? 言葉とか、仕草とか」

 「うーん、心当たりはないかなぁ……」

 あたしがのんきにそう答えると、利奈は、

 「ないわけないじゃん。学園新聞に載ってる写真の、あんたたちのあの顔。嬉しそうだったじゃん。好きな者同士じゃないと、あんな顔、絶対しないよ。それに、男子がさっき安達に言ってたけど、好きじゃないなら、安達、なんであんたの誘いについて来るの? なんか、サインかメッセージみたいなのがあっただろ?」

と言う。そのとき、ひとつだけあたしの記憶がよみがえった。

 「そう言えば、安達、あたしと帰る途中で、一度だけ言ったの。あたしと一緒だと帰り道がいつもと違って見える、きらきら輝いているような気がするって……」

 あたしがそう言うと、ナメクジのように死にかけていた利奈の目に生気がよみがえる。利奈は突然、昼食のお箸を持ったまま、

 「それだ! それそれ!」

と言って、勢いよく立ち上がった。

 「利奈、お箸持ったまま立ち上がらないでよー」

というゆっきーを無視して、利奈はドン、と自分の椅子に片脚を乗せながら続ける。

 「出てんじゃん。安達からのメッセージ、ビッシビシに出まくってんのに、あんたって奴は……。いつもと同じ帰り道なのに、あんたが一緒にいるときだけいつもと違って見える? そんなわかりやすいメッセージ、ないじゃん!」

 利奈は、完全に自分の世界に入っている。お箸を持ったままの手を、言葉にあわせて突き上げたり、振り回したり、まるでオーケストラの指揮者みたいだ。指揮者は2本も棒、持たないけど。

 少し落ち着きを取り戻した利奈は、椅子の上に乗せていた脚を下ろし、再び椅子に座って弁当を食べ始める。

 「志織、わかってあげなよ。安達がそれを言うのに、どんだけ勇気が必要だったか。引っ込み思案で気が弱くて、人間失格レベルのヘタレで、空気呼ばわりされてて、1週間くらいいなくても誰にも気付いてもらえそうになかった安達にとって、あんたにそれを言うだけでも、多分、エベレストに登るなみの勇気が必要だったと思うよ」

 利奈がそう言うのを聞いて、何人かの男子が「ギャハハハ」と大笑いしているが、利奈には聞こえていないようだった。他人が自分の悪口を言っていると、しっかり聞こえてしまうあたしと違って、利奈はおおらかな性格だった。

 「あんた、安達に対して、今、すごいひどい言い方しなかった?」

 あたしが突っ込みを入れるが、利奈は悪びれもせず、

 「ホントのことなんだから仕方ないじゃん。なー、ゆっきー?」

と、ゆっきーに話を振る。

 「前はそうだったけど、今の安達くんは、がんばり屋さんで、私は悪くないと思うよ」

 利奈のひどい言葉を、ゆっきーはあっさり否定する。あたしは心の中で感謝した。

 「そうかー。でさ、志織、あんたは安達のこと、どう思ってんの?」

 利奈が蒸し返す。もう、そこはいいんだってば、とあたしは思ったが、何か言わないと終わりそうになかった。

 「安達と一緒にいると、なんか落ち着くし、悪くないと思うけど……」

 「なんと!」

 利奈は、そう言って再び勢いよく立ち上がる。

 「志織は、安達と一緒にいると落ち着く。安達は、志織と一緒にいるときだけ、帰り道がいつもと違って見える。学園新聞のスクープ通り、これは完全に決まりですねー!」

 利奈はなんだか嬉しそうだ。人の色恋沙汰を完全にネタにして楽しんでいる。まったく、完全に他人事だからいい気なもんだ。

 「というわけで、志織、もう公認にしちゃいな。どっちも悪いとは思ってないわけだし、あの写真が出て学園中に知られた以上、もう前に進むのみ。前に国語で習った詩にもあったじゃん。『僕の後ろに道はない。僕の前に道はできる』って。前に進めってことじゃね?」

 「利奈、それ、反対だよ。『僕の前に道はない。僕の後ろに道は出来る』だよ〜」

 爆走を続ける利奈の間違いに、ゆっきーがすかさず突っ込む。ノリノリだった利奈の顔に初めて動揺の色が浮かぶ。あたしはそれを見逃さなかった。

 「ゆっきーの言う通り、前と後ろが反対!」

 ここまでやられっぱなしだったあたしは、すかさず反撃する。

 「マジかよ? なんて詩だっけ?」

 「『道程』でしょ。高村光太郎の」

 あたしがそう言うと、男子数人から「ドーテー?」「ドーテーだってよ」と声が上がる。

 「おい、そこの男子! 今、ドーテーって聞いて、スケベな想像してただろ? 潰すぞ!」

 利奈がそう言うと、声を上げた男子は驚いて「すいません」と謝った。なんでもスケベなことに結びつけるあたり、さすがは中学生男子だけど、利奈もそんなに本気出して怒らなくてもいいのに。

 利奈が、スケベ男子を怒鳴りつけたところで、昼休み終了5分前を告げる予鈴が鳴る。いつもはこの楽しい談笑タイムを打ち切る非情のチャイムだけど、今日だけはこれが鳴ってくれて本当によかったと、あたしは胸をなで下ろす。

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 放課後。あたしは安達を待たせるとベランダに連れ出す。安達は、けさからの騒動もあって、あたしにここに連れ出された理由をすでにわかっているようだった。教室の中では、心配そうに、利奈、ゆっきーがあたしたちを見守っている。

 安達の顔には、隠しようもなく疲れが見える。こいつはこいつで、朝からずっとクラス中の男子にからかわれっぱなしだったのだから無理もない。

 「安達、お疲れのようだけど、今からあたしが言うこと、ちゃんと聞いてくれる?」

 あたしがそう言うと、安達は、疲れを覆い隠すような表情で、気丈に「はい」と答える。

 「あたし、けさからいろいろ考えて、昼休みも利奈、ゆっきーといろいろ話したんだけど、安達のこと、もう公認にしようと思うの。そう決めたから、安達もそれでいいよね?」

 あたしは、利奈との昼休みの会話の中で、もう公認にする以外に方法がないと覚悟を決めていた。安達の了解なく、ひとりで決めることはできないので、こうして本人の意思を確認することにしたものの、安達の答える内容によっては自分の決意が揺らぎかねなかった。「それでいいかな?」ではなく、「いいよね?」と、わざと有無を言わせない聞き方をしたのは、これ以外の方法はあたしたちにはないよ、と安達にわからせると同時に、自分の決意を守るためでもあった。

 「ちょっと待ってください。公認って……僕と畑山さんが、恋人同士として、みんなの前で付き合うってことですよね?」

 そうだよ、とあたしは答える。

 「僕、まだそんな準備、全然できてないです……」

 安達の声は小さく、泣きそうだった。

 「準備ならあたしだってできてないよ。こんな展開になるなんて思ってなかったし、完全に不意打ちだったし。でも、利奈の言う通り、これ以外に方法がある?」

 「……ない、と思います……」

 弱々しい声で、観念したように答える安達。初めて一緒に帰った日、誰かに見られたらまずくないかと心配し、校門を出ながら怯えるように周りをきょろきょろと見回す安達を、あたしは深く考えないまま不審者みたいだと言って笑った。その心配が現実になってしまった今、あたしは「だから言ったじゃないですか」と目の前の安達から責められても仕方がないと覚悟していた。

 だが、安達はあたしに何も言わなかった。過去のあたしたちの発言を思い出すほどの余裕がないのか。あたしに何か言っても言い返されるだけだとあきらめているのか。それとも、この思わぬ事態にどうしたらいいかわからず、すべてをあたしに委ねるつもりなのか。おそらく、その全部だろう。あたしは決意を示すため、あえて強気に振る舞ってみせる。

 「公認になるからって、今までと変わることは、多分ないよ。学級委員の仕事が終わった後、一緒に帰るのも、喫茶でお茶を飲むのも。変わるのは、それがあたしたちの秘密じゃなくなるってことだけだと思う。だから、そんなに怯えないで。何か困ったことが起きたら、2人で力を合わせて、乗り越えていこうよ」

 安達は、声も出せないまま、静かにうなずく。自分の置かれた運命を理解したように、あたしには見えた。

 「それで、あたしの公認になるのに、少し、お願いがあるんだけど」

 安達が、驚いたように顔を上げる。あたしはその顔を見ながら、安達に告げた。あたしの公認になる以上、安達は、生徒会書記の公認であり、いずれは生徒会長の公認という立場になるかもしれない。少なくとも学園内では、それにふさわしい態度、行動を取ってほしい、と。

 「生徒会書記の公認にふさわしい態度、行動って、……僕はどんなふうにすればいいんですか?」

 安達はまだ怯えている。あたしの言ったことが抽象的すぎたのだろうか。なにか、とてつもなく無理な要求をされるのではないかと怖れているようだった。不安を取り除くため、あたしは言った。

 「たいしたことじゃないよ。今までの、そのオドオドした態度をやめて、自信、プライドを持ってほしいの。あたしの公認だということはもちろんだけど、森本学園の生徒だということも、2-Cの一員だということも。そして、学級委員だということに対しても。もっと自信を持って」

 あたしがそう言うと、安達は、少し間を置いた後、なにかを決意したように、

 「はい。わかりました」

と言った。

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 「しかし志織、あんたって結構、ひどい奴だよねー」

 翌日のお昼休み。あたしはまた利奈、ゆっきーと屋上でお昼を食べている。昨日とは打って変わっていい天気だ。昨日がこんな天気だったら、あの会話をみんなに聞かれることもなく済んだのに、と思うと、あたしは改めて恨めしかった。

 「ひどい奴って、どういうこと?」

 あたしがそう聞き返すと、利奈は呆れたような表情を交えながら答えた。

 「わかんないか? あんたが安達を初めて帰りに誘ったとき、安達はあんたに『誰かに見られたら、まずくないですか』って言ったんだろ?」

 「うん、そうだけど」

 「それに対して、あんたは考えてあげるどころか、笑い飛ばした上、心配する安達をよりによって不審者扱い。それでいて、いざ学園新聞に載ってバレちゃうと、ごめんなさいのひとこともなく、『ほかに方法がないんだから、未来の生徒会長の公認にふさわしい態度をとれ』なんて、よく言えるよね」

 うっ……。あたしは言葉に詰まった。確かに、あたし自身、そのことは自覚していたし、だからこそ安達に責められるかもしれないと覚悟はしていた。幸い何事もなかったものの、改めて親友に指摘されると心をえぐられるような気分になる。

 「相手があのおとなしい安達だから、何事もなく済んだけど、普通の男子だったら、あんたの顔にグーくらい飛んできてもおかしくないよ。少なくとも、あたしが安達の立場だったら、あんたの顔にグー入れた上、謝れくらいは言うかな。あんた、その程度のこともわからないで、マジで生徒会長やるつもりなの?」

 「ごめん、ごめんってば利奈。あたしも反省してるから」

 あたしはそう答えるのが精いっぱいだった。利奈は、あたしに目もくれず、お弁当を食べている。

 「あんた、そう思ってんだったら、あたしじゃなくて、安達に後で謝っときな」

 あたしは、必ずそうするから、と言って何とか利奈をなだめた。確かに利奈の言い方にはキツいものがあるが、あたしと利奈は何でも言い合える関係だからこそ、こうして時にはお互いにキツいと思うようなことでも面と向かって口にできる。それを受け止める度量はお互いに持っているつもりだった。あたしは、改めて利奈に感謝した。

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