<日本鉄道公団法案 全文>

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●日本鉄道公団法案

目次
 前文
 第一章 総則(第一条~第十二条)
 第二章 管理委員会(第十三条~第二十一条)
 第三章 役員及び職員(第二十二条~第三十七条)
 第四章 会計(第三十八条~第五十二条)
 第五章 国土交通大臣との関係(第五十三条~第五十四条)
 第六章 罰則(第五十五条~第五十六条)
 第七章 雑則(第五十七条~第五十九条)
 附 則

 日本国有鉄道改革法の施行により旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社(旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律施行時においてその適用を受けていた会社。以下「旅客鉄道会社等」という。)が発足してから三十五年が経過した。旅客鉄道会社等は、この間、日本国有鉄道の鉄道事業、旅客自動車運送事業及びこれに付帯する事業を引き継いだ我が国における基幹的輸送機関として、国民経済、国民生活及び各種産業を支えるために重要な役割を果たしてきた。
 しかし、この間の社会経済情勢の著しい変化により、旅客鉄道会社等が基幹的輸送機関としての本来の役割を発揮することが次第に困難となりつつある。とりわけ、地方においてその傾向は顕著であり、近年における大型台風、風水害、大規模地震等の災害とあいまって、旅客自動車運送事業をもってするには距離が長すぎ、航空事業をもってするには距離が短すぎる中距離区間の旅客、貨物両面の輸送に長期にわたって大きな支障を与える事例が激増している。こうした中距離で一定の輸送需要を持つ区間において鉄道の廃止が続くことによって、とりわけ通学や通院といった地域住民の日常生活上の移動のみならず、国民生活に欠かせない物資の輸送にも重大な影響が生じている。
 また、少子高齢化の進展は、高齢運転者が加害者となる悲惨な交通事故の増加をもたらしており、高齢運転者に自動車運転免許の適切な返納を求める各界各層の意見が近時、強まっているが、そのような施策が進まないのは、地方での公共交通機関の整備が進んでいないことに起因する。鉄道事業法によって、鉄道事業における収支性が重視されるようになった結果、地方において鉄道をはじめとする公共交通機関の廃止が進んだことも、このような事態の一因となっている。地方から都市への人口流出が加速した結果、過密化が進んだ都市部において感染症が拡大する一方、地方では住民の日常生活や地域社会経済の健全な持続を図ることが困難となっている。
 こうした事態に対処して、基幹的輸送機関としての旅客鉄道会社等を、都市、地方の別なく今後も持続可能なものとしていくためには、旅客鉄道会社等の公共性を一層重視し、かつ国民の多様な意見を適切に反映させる新たな民主的運営形態を確立することが急務となっている。また、人類全体が今後も生存可能な地球環境を維持するため、二酸化炭素の排出量を減少させることが国際社会共通の課題となっており、この面からも、一人あたり二酸化炭素排出量の多い自動車から、少ない公共交通機関への転移を促す施策に政府、国民挙げて取り組む必要がある。
 ここに、旅客鉄道会社等の持続、発展を展望しうる新たな運営形態を確立することを通じてこれら諸問題の適切な解決を図るため、この法律を制定する。

   第一章 総則

(日本鉄道公団の設立及び旅客鉄道会社等の事業の承継)
第一条 国は、旅客鉄道会社等が実施している鉄道事業及び旅客自動車運送事業が地域ごとに分割されていることによって、非効率な運営におちいり、かつ、会社ごとの経営状況の違いに起因する運賃並びに料金、職員の賃金をはじめとする労働条件及びサービス水準の格差が拡大していることにかんがみ、これらを是正し、全国一元的運営に復帰させることを目的として、令和四年度中に日本鉄道公団(以下「公団」という。)を設立する。
2 国は、次の各号に掲げる旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社の事業を、当該各号に定める期間までに公団に承継させるものとする。
 一 北海道旅客鉄道株式会社、四国旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社 令和五年三月三十一日まで
 二 東日本旅客鉄道株式会社、東海旅客鉄道株式会社、西日本旅客鉄道株式会社及び九州旅客鉄道株式会社 令和八年三月三十一日まで
3 国は、次の各号に掲げる会社の旅客自動車運送事業を、当該各号に定める期間までに公団に承継させるものとする。
 一 ジェイ・アール北海道バス株式会社、ジェイアール四国バス株式会社 令和五年三月三十一日まで
 二 ジェイアールバス東北株式会社、ジェイアールバス関東株式会社、ジェイアール東海バス株式会社、西日本ジェイアールバス株式会社、中国ジェイアールバス株式会社及びJR九州バス株式会社 令和八年三月三十一日まで

(日本国有鉄道から分離された事業の承継)
第二条 国は、日本国有鉄道(以下「国鉄」という。)が経営していた鉄道事業及び旅客自動車運送事業以外の事業であって、公団への承継が適当と認めるものについて、政令をもって当該事業及び承継すべき時期を指定し、承継させることができる。

(新幹線開業に伴って経営分離された鉄道路線の公団への承継)
第三条 国は、全国新幹線鉄道整備法(昭和四十五年法律第七十一号)第四条第一項に規定する建設線(以下「整備新幹線」という。)の全部又は一部の区間の営業の開始により当該建設線に係る同法第六条第一項に規定する営業主体がその全部又は一部を廃止した鉄道事業であって、当該営業主体以外の者が経営を引き継いだ路線について、公団に承継するものとする。

(特定地方交通線転換線の承継)
第四条 国は、日本国有鉄道改革法の施行に伴う廃止前の日本国有鉄道経営再建促進特別措置法(昭和五十五年法律第百十一号)に基づいて特定地方交通線に指定された地方交通線であって、国鉄から経営分離された地方交通線を運行する鉄道事業者又は当該特定地方交通線を転換した旅客自動車運送事業を行う事業者が、当該鉄道事業又は旅客自動車運送事業の公団への承継を希望した場合には、前条に規定する手続きによって公団に承継するものとする。
2 前項に規定する鉄道事業や旅客自動車運送事業の公団への承継を行うには、次の各号に定める関係者が参加する旧国鉄特定地方交通線転換交通機関公団承継協議会を設置して、その議決を経なければならない。
 一 当該鉄道又は旅客自動車が運行されている地域の地方公共団体の長及び議会の長
 二 当該鉄道又は旅客自動車が運行されている地域の学校長、病院長、警察署長
 三 その他前二号に規定する関係者が必要と認める者
3 国は、第一項の規定に基づく承継を行う場合には、前項に規定する協議会の議決によるものとする。

(独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構が行う事業の承継)
第五条 国は、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法(平成十四年法律第百八十号)に規定する法人。以下「機構」という。)が保有する新幹線の施設設備等の財産を、令和八年三月三十一日(新青森から新函館北斗までの区間については、令和五年三月三十一日)までに公団に承継するものとする。
2 国は、機構が特例業務勘定をもって実施している業務を、令和八年三月三十一日までに公団に承継するものとする。
3 公団は、機構が建設勘定をもって建設中の整備新幹線については、この法律又は他の法律で別段の定めのない限り、工事完成後、関係法令の定めるところにより機構から公団に承継する。

(公団の基本的運営理念)
第六条 公団は、その所管する鉄道事業及び旅客自動車運送事業の公共性を自覚し、地方においても国民生活に必要な移動の利便性を最大限確保することを旨として、実施しなければならない。
2 公団は、公正で民主的、自律的事業運営を行うとともに、最大限の情報公開を行わなければならない。
3 公団には、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成十一年法律第四十二号)の規定(第二条及び第二十六条を除く。)を準用する。この場合において、同法中「行政機関」とあるのは「日本鉄道公団」と、「行政文書」とあるのは「公団文書」と、「行政機関の長」とあるのは「日本鉄道公団総裁」と、それぞれ読み替えるものとする。

(名称の使用制限)
第七条 公団は、その名称中に日本鉄道公団の文字を用いなければならない。
2 公団でない者は、その名称中に日本鉄道公団又はこれに類似する文字を用いてはならない。

(公団の法人格、設立手続及び事業承継手続)
第八条 公団は、法人とする。
2 第一条の規定に基づいて公団を設立する場合の資本金は、公団設立の直前の三月三十一日現在における第一条第二項第一号及び第一条第三項第一号の各社の資本金の合計金額とする。
3 公団設立後、第一条から第四条に規定する事業(第一条第二項第一号及び第一条第三項第一号に規定する事業を除く。)の承継が行われたときは、当該各号に規定する会社の承継の直前の三月三十一日現在における資本金の合計額を基礎として、資本金を増額する。
4 前項の規定にかかわらず、公団は、必要があるときは資本金を増額し、又は減額することができる。
5 公団は、政令の定めるところにより、登記をしなければならない。前二項に規定する資本金の増額又は減額があった場合も同様とする。
6 前項の規定により登記を必要とする事項は、登記の後でなければ、これをもって第三者に対抗することができない。

(定款)
第九条 公団は、この法律に定める事項を除く外、次に掲げる事項を記載した定款を定めなければならない。
 一 目的
 二 名称
 三 事務所の所在地
 四 資本金及び出資に関する規定
 五 業務の範囲
 六 剰余金の処分及び損失の処理に関する規定
 七 準備金に関する規定
 八 この法律第十五条に規定する公選による委員の選挙の方法に関する規定
 九 委員の報酬に関する規定
 十 情報公開に関する規定
 十一 その他管理委員会が必要と認める規定
2 定款は、第二十一条第二項の規定にかかわらず、管理委員会の出席委員のうち三分の二以上の多数による議決をもって、変更することができる。
3 公団は、定款を制定し、又は変更したときは、遅滞なく、主務大臣(次の各号に掲げる大臣をいう。)に届け出なければならない。
 一 第一項第四号、第六号、第七号及び第九号に掲げる事項については、財務大臣及び国土交通大臣
 二 第一項第八号及び第十号に掲げる事項については、総務大臣及び国土交通大臣
 三 前二号に掲げる事項以外のものについては、国土交通大臣

(公団への出資ができる者)
第十条 公団への出資は、次の各号に掲げる者に限り、行うことができる。
 一 国
 二 機構
 三 地方公共団体
 四 特別会計をもって交通事業を行う地方公営企業(地方公営企業法(昭和二十七年法律第二百九十二号)第二条第一項第三号から第五号に掲げる事業を行う地方公営企業(同条第三項の規定に基づく広域連合を含む。)をいう。)
 五 東京地下鉄株式会社(東京地下鉄株式会社法(平成十四年法律第百八十八号)に規定する東京地下鉄株式会社をいう。)
 六 大阪市高速電気軌道株式会社
 七 大阪シティバス株式会社
 八 日本電信電話株式会社(日本電信電話株式会社等に関する法律(昭和五十九年法律第八十五号)に規定する日本電信電話株式会社等をいう。)
 九 日本郵便株式会社(日本郵便株式会社法(平成十七年法律第百号)に規定する日本郵便株式会社をいう。)

(一般会計に属することとされた国鉄債務の承継の免除)
第十一条 公団は、日本国有鉄道清算事業団の債務等の処理に関する法律(平成十年法律第百三十六号。以下「債務等処理法」という。)の規定に基づいて一般会計に属することとされた債務については、承継しないものとする。

(非課税の原則、国庫納付金及び国有資産等所在市町村交付金)
第十二条 公団には、所得税及び法人税を課さない。ただし、財務大臣は、毎年度の決算において公団に剰余金が生じたときは、その百分の十を限度として、国庫に納付すべき旨を命ずることができる。
2 都道府県、市町村その他これらに準ずるものは、公団に対しては、地方税を課することができない。
3 公団の事務所又は事業所が所在する市町村に対しては、国有資産等所在市町村交付金を支給する。この場合においては、国有資産等所在市町村交付金法の規定を準用する。

   第二章 管理委員会

(管理委員会の設置)
第十三条 公団に、意思決定及び業務運営の総合的な指揮監督を行わせるため、管理委員会を置く。
2 管理委員会は、次に掲げる事項をつかさどる。
 一 公団の総合的な業務運営に関する方針の企画及び立案に関する事項
 二 公団の予算及び決算に関する事項
 三 役員の任免及び報酬に関する事項
 四 職員の給与その他の労働条件及び退職手当に関する事項
 五 定款の制定及び改正に関する事項
 六 内部規程の制定並びに改廃及びその公表に関する事項
 七 前各号に掲げる者の外、管理委員会が必要と認めた事項
3 前項第一号の総合的な業務運営に関する方針には、災害復旧及びそのための予算措置に関する事項を含まなければならない。
4 管理委員会は、運賃の決定や改定、路線の新設・改廃などの重要な事項を議決するに当たっては、事前に公聴会の開催や意見徴収手続きを経なければならない。

(管理委員会の構成及び委員の任期)
第十四条 管理委員会は、十五人の委員によって構成する。
2 委員のうち一人を委員長とし、委員の互選によって選任する。
3 委員の任期は六年とする。ただし、補欠の委員については前任者の残存期間とする。
4 次条に規定する委員にあっては三年ごとに半分を改選する。
5 管理委員会は、あらかじめ、委員のうちから、委員長に事故のある場合に委員長の職務を代理する者を定めておかなければならない。

(公選による委員)
第十五条 委員のうち十人は、公職選挙法に基づいて、選挙人名簿に登録されている有権者(以下「有権者」という。)による公選を経て選出する。
2 自身を除く百人以上の有権者の推薦を得た有権者は、住所を有する市町村の選挙管理委員会に推薦状を添付した立候補届を提出することにより、候補者となることができる。
3 この条に定める委員は、公団が承継した事業を行っていた旅客鉄道会社等に対応する次表の「区域」欄に掲げる区域(「都道府県」欄に掲げる都道府県をもってその区域とみなす。)を選挙区として、選挙区ごとに「定数」欄に掲げる人数を選挙する。

区域 都道府県 定数
北海道旅客鉄道株式会社の区域 北海道 二人
東日本旅客鉄道株式会社の区域 青森県、秋田県、山形県、岩手県、宮城県、福島県、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県、栃木県、群馬県、新潟県、山梨県 二人
東海旅客鉄道株式会社の区域 愛知県、静岡県、岐阜県、長野県、三重県 二人
西日本旅客鉄道株式会社の区域 大阪府、京都府、兵庫県、奈良県、和歌山県、滋賀県、福井県、石川県、富山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県 二人
四国旅客鉄道株式会社の区域 愛媛県、香川県、徳島県、高知県 一人
九州旅客鉄道株式会社の区域 福岡県、佐賀県、長崎県、大分県、熊本県、宮崎県、鹿児島県 一人

3 この条に規定する委員の選挙については、公職選挙法の規定(供託金に関する規定を除く。)を準用し、直近に行われる参議院議員通常選挙に併せて実施する。

(公選によらない委員)
第十六条 委員のうち五人は、次の各号に規定する分野に関し、高い識見を持つ者のうちから、両議院の同意を得て、内閣が任命する。
 一 鉄道の安全・安定運行に関する分野 一人
 二 貨物輸送及び物流政策(環境対策含む。)に関する分野 一人
 三 障がい者など、交通弱者の利用しやすい鉄道事業及び旅客自動車運送事業の運営に関する分野 一人
 四 公団の運営する鉄道事業又は旅客自動車運送事業の利用客の利便性の維持増進に関する分野 一人
2 前項に掲げるものの外、公団の労働者の利益を代表する者一人を委員とする。
3 前項で掲げる委員は、公団の労働者の過半数を組織する労働組合がある場合にはその推薦する者とし、公団の労働者の過半数を組織する労働組合がない場合には、労働者が参加する選挙によって選出された者とする。

(公選によらない委員の欠格条項)
第十七条 前条で掲げる委員には、次の各号の一に該当する者は就任することができない。
 一 成年被後見人又は被保佐人の宣告を受け、復権を得ない者
 二 禁こ又は懲役の刑に処せられ、又はその刑を受けることがなくなった日から起算して三年を経過しない者
 三 国務大臣、国会議員、政府職員又は地方公共団体の議会の議員
 四 政党の役員(任命の日以前一年間においてこれに該当した者を含む。)
 五 公団に対し、物品の売買若しくは工事の請負を業とする者、又はこれらの者が法人であるときはその役員若しくは名称の如何にかかわらず役員と同等以上の職権若しくは支配力を有する者(任命の日以前一年間においてこれらの者であった者を含む。)
 六 前号に掲げる事業者の団体の役員又は名称の如何にかかわらず役員と同等以上の職権又は支配力を有する者(任命の日以前一年間においてこれらの者であった者を含む。)

(委員の身分保障及び罷免)
第十八条 管理委員会の委員は、次の各号に規定する場合を除く外、任期中、その意に反して罷免されることがない。
 一 心身の故障のため職務の執行ができないと認める場合
 二 職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認める場合
 三 第十六条に規定する委員にあっては、前条各号の規定に該当することとなった場合
2 委員が、前項各号の規定に該当することとなった場合においては、次の各号に定める手続きを経て、これを罷免することができる。
 一 第十五条に規定する委員にあっては、管理委員会の議決
 二 第十六条に規定する委員にあっては、両議院の同意

(委員の地位)
第十九条 委員に関する罰則の適用については、法令により公務に従事する者とみなす。

(委員の報酬)
第二十条 委員の報酬については、管理委員会が定款をもって定めるところによる。

(議決)
第二十一条 管理委員会は、委員長(委員長が欠けた場合において、第十四条第五項に規定する委員長の職務を代理する者を含む。以下この条において同じ。)を含む過半数の委員の出席がなければ議事を開き、議決をすることができない。
2 管理委員会の議事は、出席者の過半数をもって決する。ただし、可否同数のときは、委員長が決するところによる。
3 管理委員会は、公団の役員又は職員をその会議に出席させ、必要な説明を求めることができる。
4 公団の役員又は職員は、管理委員会に対し重要事項の説明を行うため必要があると認められるときは、管理委員会への出席を求めることができる。この場合において、出席の可否は管理委員会の議決により決する。

   第三章 役員及び職員

(役員)
第二十二条 公団の役員は、総裁、副総裁及び理事とする。

(役員の職務及び権限)
第二十三条 総裁は、公団を代表し、管理委員会の指揮監督の下にその業務を総理する。
2 総裁は、管理委員会に対し責任を負う。
3 副総裁は、総裁の定めるところにより、総裁を補佐して公団の業務を掌理し、総裁に事故があるときにはその職務を代理し、総裁が欠員のときにはその職務を行う。
4 理事は、総裁及び副総裁を補佐して公団の業務を掌理し、総裁及び副総裁に事故があるときにはその職務を代理し、総裁及び副総裁が欠員のときにはその職務を行う。

(役員の任命及び任期)
第二十四条 総裁及び副総裁は、公団の推薦に基づいて、管理委員会がその議決により任命する。
2 前項の任命は、第二十一条第二項の規定にかかわらず、委員三分の二以上の多数による議決を要する。
3 理事は、総裁が任命する。
4 総裁及び副総裁の任期は、それぞれ四年とする。
5 総裁及び副総裁は、再任されることができる。

(役員の欠格条項)
第二十五条 第十七条各号の一に該当する者は、役員となることができない。

(総裁及び副総裁の罷免)
第二十六条 管理委員会は、総裁及び副総裁が心身の故障のため職務の執行ができないと認める場合、又は総裁及び副総裁に職務上の義務違反その他総裁たるに適しない非行があると認める場合においては、議決をもってこれを罷免することができる。
2 総裁は、理事が心身の故障のため職務の執行ができないと認める場合、又は理事に職務上の義務違反その他副総裁たるに適しない非行があると認める場合においては、管理委員会の同意を得て、これを罷免することができる。

(役員の兼職禁止)
第二十七条 役員は、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない。

(代表権の制限)
第二十八条 公団と総裁、副総裁又は理事との利益が相反する事項については、これらの者は、代表権を有しない。この場合においては、管理委員会は、これらの代表権を有しない役員以外の他の役員のうちから公団を代表する者を選任しなければならない。

(職員の兼業の禁止又は制限)
第二十九条 第十七条第一号から第三号の規定に該当する者は、職員となることができない。
2 第十七条第四号の規定に該当する職員は、総裁に兼業の許可を受けなければならない。
3 第十七条第五号及び第六号の規定に該当する職員は、総裁に兼業の許可を受けなければならない。ただし、当該職員は兼業の許可を受けた場合においても、公団との間で行う契約に事業者として参加してはならない。

(任免の基準)
第三十条 職員の任免は、その者の受験成績、勤務成績又はその他の能力の実証に基いて行う。

(給与)
第三十一条 職員の給与は、その職務の内容と責任に応じ、かつ、同一労働同一賃金の原則に従って定められなければならない。
2 職員の基本給は、地域の別なく全国統一としなければならない。
3 職員の給与は、前二項に定めるものの外、生計費並びに国家公務員及び民間事業の従業員における給与その他の条件を考慮して、管理委員会が定める。

(降職及び免職)
第三十二条 職員は、次の各号の一に該当する場合を除き、その意に反して降職され、又は免職されることがない。
 一 勤務成績がよくない場合
 二 心身の故障のため職務の遂行に支障があり又はこれに堪えない場合
 三 その他その職務に必要な適格性を欠く場合
 四 業務量の減少その他公団の業務運営上やむを得ない事由が生じた場合

(休職)
第三十三条 職員は次の各号の一に該当する場合を除き、その意に反して休職にされることがない。
 一 心身の故障のため長期の休養を必要とする場合
 二 刑事事件に関し起訴された場合
2 前項第一号の規定による休職の期間は、三年以内において任命権者が定める期間とする。この場合において、休職期間中その故障が消滅したときは、速やかに復職させるものとし、休職のまま満期に至つたときは、退職者とする。
3 第一項第二号の規定による休職の期間は、その事件が裁判所に係属する間とする。
4 休職者は、職員としての身分を保有するが、その職務に従事しない。
5 休職者の休職期間中における俸給は、管理委員会が定める。

(懲戒)
第三十四条 職員が次の各号の一に該当する場合においては、総裁は、これに対し懲戒処分として免職、停職、減給又は戒告の処分をすることができる。
 一 この法律又は公団の定める業務上の規程に違反した場合
 二 職務上の義務に違反し、又は職務を怠った場合
2 停職の期間は、一月以上一年以下とする。
3 停職者は、職員としての身分を保有するが、その職務に従事しない。停職者の停職期間中における俸給は、管理委員会が定める。
4 減給は、一月以上一年以下俸給の十分の一以下を減ずる。

(服務の基準)
第三十五条 職員は、その職務を遂行するについて、誠実に法令及び公団の定める業務上の規程に従わなければならない。
2 職員は、全力をあげて職務の遂行に専念しなければならない。ただし、労働組合法の規定により、専ら労働組合の事務に従事する者については、この限りでない。

(職員の労働条件)
第三十六条 職員の労働条件については、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)その他の労働関係法令の定めるところによる。
2 公団は、労働基準法第三十六条の規定により時間外労働を命ずる場合であっても、同条の規定による限度まで勤務を命じることができるものと解してはならず、職員の勤務時間外又は休日における労働時間を短縮するよう最大限努めなければならない。
3 公団は、前項に規定する職員の勤務時間外又は休日における労働時間を短縮するため、必要な人員の確保その他労働条件の改善を行わなければならない。

(公務員に関する規定の準用)
第三十七条 公団の役員及び職員に対する罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。

   第四章 会計

(公団の経理原則)
第三十八条 公団の会計及び財務に関しては、企業会計原則を適用する。
2 公団が行う鉄道事業及び旅客自動車運送事業の開始及び改廃の判断を行うに当たっては、その業務の公共性にかんがみ、独立採算制を基本としてはならない。
3 公団が業務運営上、欠損を生じたときは、管理委員会の議決を経て、国に対し、その補てんを求めることができる。
4 国は、前項の規定に基づき、公団の要求があった場合には、毎年度、その欠損を補てんしなければならない。

(公団の運賃決定の原則)
第三十九条 公団が行う鉄道事業及び旅客自動車運送事業の運賃及び料金は、次の原則によってこれを定める。
 一 公正妥当なものであること。
 二 原価を償うものであること。
 三 産業の発達に資すること。
 四 賃金及び物価の安定に寄与すること。
2 公団は、前項に規定する運賃料金を、地域又は乗客及び荷主の多寡にかかわらず、同一条件であれば同一の運賃料金となるよう定めなければならない。

(事業年度)
第四十条 公団の事業年度は、毎年四月に始まり、翌年三月に終る。
2 公団は、毎事業年度の決算を、翌年度七月三十一日までに完結しなければならない。

(予算)
第四十一条 公団は、毎事業年度の予算を作成して管理委員会に提出し、その議決を受けなければならない。
2 管理委員会は、前項の規定により予算の提出を受けたときは、これを検討して必要な調整を行う外、必要がある場合には財務大臣に助言を求めることができる。
3 予算の形式、内容及び添附書類、作成及び提出の手続については管理委員会が定める。

(追加予算)
第四十二条 公団は、予算作成後に生じたやむを得ない事情により、避けることのできない場合に限り、予算作成の手続に準じ追加予算を作成し、これを管理委員会に提出することができる。
2 前条の規定は、前項の規定による追加予算について準用する。

(決算)
第四十三条 公団は、事業年度ごとに財産目録、貸借対照表及び損益計算書を作成し、決算完結後一月以内に管理委員会に提出してその承認を受けなければならない。
2 公団は、前項の規定による管理委員会の承認を受けたときは、その財産目録、貸借対照表及び損益計算書を公告しなければならない。

第四十四条 公団は、予算の形式に準じ、毎事業年度の決算報告書を作成し、管理委員会に提出しなければならない。

第四十五条 公団は、決算報告書を作成したときは、これを会計検査院に送付しなければならない。

(借入金)
第四十六条 公団は、管理委員会の承認を受けて、必要な資金の借入をすることができる。
2 前項の規定による借入金の限度額については、予算をもって定めなければならない。
3 公団の一時借入金は、当該事業年度内に償還しなければならない。ただし、資金不足のため償還することができないときは、その償還することのできない金額に限り、管理委員会の承認を受けて、これを借り換えることができる。
4 前項但し書きの規定により借り換えた一時借入金は、一年以内に償還しなければならない。
5 公団は、毎事業年度、長期借入金の償還計画を立て、管理委員会の承認を受けなければならない。

(債券発行による資金調達)
第四十七条 公団は、管理委員会の議決を経て、業務運営に必要な資金を募るため、公団債券を発行することができる。
2 公団債券の発行額、発行限度額及び償還期限は、予算をもって定めなければならない。

(政府からの貸付)
第四十八条 国は、公団に対し資金の貸付をすることができる。

(業務に係る現金の取扱)
第四十九条 公団の業務に係る現金については、管理委員会が定める現金取扱に関する規程による。
2 公団の出納職員は、管理委員会が定める規程に従って、公団の債務をその保管に係る現金をもって支払うことができる。

(会計帳簿)
第五十条 公団は、業務の性質及び内容並びに事業運営及び経理の状況を適切に示すため必要な帳簿を備えなければならない。

(財産処分の制限)
第五十一条 公団は、管理委員会の許可を受けなければ、営業線及びこれに準ずる重要な財産を譲渡し、交換し、又は担保に供することができない。
2 前項の重要な財産の範囲及び種類は、管理委員会が定める。

(会計検査)
第五十二条 公団の会計については、会計検査院が検査する。

   第五章 国土交通大臣との関係

(業務運営に関する助言)
第五十三条 国土交通大臣は、公団の業務運営に関し、必要な助言を行うことができる。

(命令及び報告)
第五十四条 国土交通大臣は、公共の福祉を増進するため特に必要があると認めるときは、公団に対し必要な命令をすることができる。
2 国土交通大臣は、必要があると認めるときは、公団から業務その他に関する報告を行わせることができる。

   第六章 罰則

(罰則)
第五十五条 総裁、副総裁又は総裁の職務を行い若しくは総裁を代理する理事が次の各号の一に該当するときは、その業務に対する責任に応じて、十万円以下の罰金に処する。
 一 この法律により、管理委員会の許可を受けるべき場合に受けなかつたとき。
 二 第六条第二項の規定に基づく登記を怠り、又は虚偽の登記をしたとき。
 三 第二十七条の規定に違反して兼業を行ったとき。
 四 前条第一号の規定に基づく命令に従わず、又は第二項の規定に基づく報告を怠り、もしくは虚偽の報告をしたとき。
2 公団の役員又は職員が、第五十一条の規定に反し、管理委員会の許可を受けずに公団財産を処分したときは、前項第一号の規定にかかわらず、一千万円以下の罰金に処する。

第五十六条 公団でない者が、第七条第二項の規定に違反して公団の名称を使用したときは、十万円以下の罰金に処する。

   第七章 雑則

(国家公務員共済組合法の適用)
第五十七条 公団の役員及び職員には、国家公務員共済組合法(昭和二十三年法律第六十九号)の規定を準用する。この場合において、同法中「各省各庁」とあるのは「日本鉄道公団」と、「各省各庁の長」とあるのは「日本鉄道公団総裁」と、「国庫」とあるのは「日本鉄道公団」と読み替えるものとする。
2 前項の規定に基づいて、公団の役員及び職員に係る国家公務員共済組合法に基づく業務を実施させるため、国は、日本鉄道公団の発足までに日本鉄道公団共済組合を設置する。

第五十八条 公団は、日本鉄道公団共済組合に対し、国家公務員共済組合法第六十九条第一項第三号に掲げる費用を負担する。

(他の法令の適用)
第五十九条 道路運送法(昭和二十二年法律第百九十一号)、電気事業法(昭和六年法律第六十一号)、土地収用法(明治三十三年法律第二十九号)その他の法令(国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律(昭和二十二年法律第百九十四号)を除く。)の適用については、この法律又は別に定める法律をもって別段の定をした場合を除く外、公団を国と、公団総裁を主務大臣とみなす。

  附 則

(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。

(職員の公団への承継)
第二条 この法律第一条から第五条までに規定する事業又は業務の公団への承継に当たり、その前日から引き続きこれらの事業又は業務に従事する旅客鉄道会社等、機構又は第二条から第四条までに規定する事業を行う事業体の職員である者は、別に辞令を発せられない限り、当該事業の公団への承継の日をもって公団職員となるものとする。

(管理委員会に関する経過規定)
第三条 この法律施行の際、第一条から第五条までに規定する事業又は業務のうち全部又は一部(以下この条において「事業等」という。)の公団への承継が終わっていない場合であっても、第十五条に規定する管理委員会の公選による委員の選挙については、この法律施行後に実施される参議院議員通常選挙の実施に併せて、あらかじめ実施することができる。
2 この法律施行後、最初に実施される委員の選挙において当選した者のうち、順位が第六位から第十位までであった者の任期は、第十四条第三項の規定にかかわらず、三年とする。
3 この法律施行の際、事業等の公団への承継が終わっていない場合であっても、第十六条に規定する管理委員会の公選によらない委員の任命については、あらかじめ実施することができる。
4 前三項の規定に基づいて委員の選挙及び任命が終了したときは、事業等の公団への承継が終わっていない場合であっても、あらかじめ管理委員会を発足させることができる。この場合において、管理委員会は、事業等の公団への承継の準備に関する業務を行う。

(本法施行日において参院選が実施されていない場合の措置)
第四条 この法律の施行の日までに、第十五条第三項の規定に基づく参院選が行われない見込みであるときは、国は、第十五条の規定にかかわらず、管理委員会の委員全員を第十六条の規定に基づいて任命することにより、管理委員会を発足させることができる。この場合において、当該任命を受ける委員(次条の規定に基づいて、第十五条の規定による委員に代わるものとして指定を受けた者に限る。)の任期は、第十五条の規定に基づく委員が選挙され、その任期が始まる日の前日までとする。
2 前項前段の規定に基づき管理委員会の委員を任命するときは、国は、あらかじめ任命を受ける各人に対し、委員の種類(第十五条の規定による委員に代わるものとして、前項前段の規定に基づいて任命されるもの又は第十六条に基づく委員の別をいう。)を文書で明らかにするものとする。

(買収に応じない株主がいる場合の措置)
第五条 この法律第一条第二項第二号又は第三項第二号に規定する事業又は第二条から第四条までに規定する事業の公団への承継の際、自己保有株式の公団による買収に応じない株主がいるときは、国は、当該株主の保有する株式を、第四十七条に規定する公団債券に振り替えることができる。この場合における公団債券は、第四十七条各号に規定する手続きを経て発行されたものとみなす。
2 前項の規定に該当する株主が、第十条各号の一に該当する者であるときは、その保有する株式を出資金に振り替えることができる。
3 前二項に規定する株式から公団債券又は出資金への振り替えは、株式の時価を基礎として行う。ただし、時価が額面価格を下回っているときは、額面価格とする。
4 国は、第一項の規定に基づく株式の公団債券への振り替え又は第二項の規定に基づく株式の出資金への振り替えを行った者がいるときは、速やかに、その対象者、振り替えの内容及びその金額を管理委員会に通知するものとする。

(日本国有鉄道改革法等の廃止)
第六条 次に掲げる法律は、廃止する。
 一 日本国有鉄道改革法(昭和六十一年法律第八十七号)
 二 旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律(昭和六十一年法律第八十八号)
 三 日本国有鉄道退職希望職員及び日本国有鉄道清算事業団職員の再就職の促進に関する特別措置法(昭和六十一年法律第九十一号)
 四 鉄道事業法(昭和六十一年法律第九十二号)
 五 日本国有鉄道改革法等施行法(昭和六十一年法律第九十三号)
 六 債務等処理法
2 前項に規定する法律を除く関係法律の整備については、別に法律で定める。


    理 由

 国鉄改革法による旧日本国有鉄道の改革から三十五年経過し、この間、新幹線鉄道の延伸、地方路線を中心とする在来線鉄道の縮小や第三セクター鉄道への移管、東京一極集中及びこれと表裏一体である地方の過疎化の進行等により社会経済情勢が大きく変化したことに加え、新型コロナウィルス感染拡大によって公共交通機関の乗客が大幅に減少したことが公共交通機関の経営悪化に拍車をかけている。国鉄改革法が目指した改革目的はすでに十分達成され、この方向でのさらなる改革の進展は困難となっており、また近年は国鉄改革法に基づいて構築された諸制度が逆に鉄道衰退の要因となっていることから、こうした新しい社会状況に対応した鉄道政策の基本理念を示すとともに、そのための諸制度を再構築する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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