<安全問題研究会コメント>
鉄道軌道整備法改正法案が可決・成立
~被災路線放置を続ける国・JRに鉄道事業者の責任を求める~

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1.第196通常国会に議員立法で提出され審議が続いていた鉄道軌道整備法の改正法案が、6月15日、参院本会議において全会一致で可決・成立した。過去2回国会提出されながら、解散・総選挙などを受け審議未了~廃案となった法案が3回目の提出でようやく成立の日を迎えたのである。安全問題研究会は、この法案成立を歓迎するとともに、2011年7月の新潟・福島豪雨で不通が続くJR只見線の復旧に道を開くため、この法案を作成した福島県選出自民党国会議員団、法案事前審査に関わった自民党国土交通部会、衆参両院の国土交通委員会とその関係者に対し、特に深い謝意を表明する。

2.この法案は、災害復旧費の国庫補助を赤字の鉄道事業者に限定していた従来の枠組みを改め、(1)激甚災害による被災であること、(2)当該路線が過去3年間赤字であること、(3)災害復旧費が当該路線の収入を上回っていること――等、所要の条件を満たす場合には、黒字の鉄道事業者に対しても、災害復旧費の4分の1(上下分離で「下」(線路の所有管理)を公的主体が担う場合には3分の1)を上限として国庫補助の対象とするものである。

3.1986年11月28日、参議院日本国有鉄道改革に関する特別委員会で国鉄改革関連8法案が可決・成立した際、行われた附帯決議が『各旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社の輸送の安全の確保及び災害の防止のための施設の整備・維持、水害・雪害等による災害復旧に必要な資金の確保について特別の配慮を行うこと』を政府に対して求めたのに対し、当時の運輸相及び自治相が「決議の趣旨を尊重」すると表明し、努力・善処を約束したことをすべての市民が改めて想起すべきである。

4.当研究会が鉄道軌道整備法の問題に着目し、その改正を初めて国に対して求めたのは、2014年9月に行った国土交通省への要請行動であった。それ以降、道路など他の社会資本に比べて鉄道への国家予算の配分が著しく少ないこと、鉄道が社会資本としての正当な評価を受けないまま民間企業の経営努力に任され放置されていることなどを、あらゆる機会を捉えて問題点として訴え続けてきた。3年9ヶ月にわたる活動が、鉄道軌道整備法の一部改正として実ったことは当研究会にとって喜びであり感慨無量である。

5.しかし、鉄道が道路などと同様に社会資本として位置づけられることを最終目標としている当研究会にとって、今回の法改正は小さな第一歩でありスタートに過ぎない。とりわけ、国庫補助の上限が4分の1(上下分離の場合は3分の1)と低いこと、補助対象があくまで災害復旧費に限定されており、上下分離が導入された場合であっても線路の維持管理費は補助対象にならないことなど、なお改善すべき課題は山積している。当研究会は、これら課題の改善のために活動を続ける。

6.現在の最大の問題は、事実上の経営破たん状態にあるJR北海道が「資金難」を理由に被災した鉄道路線の復旧責任を放棄していることである。根室本線、日高本線などの重要路線が災害を理由に廃線提起されている。こうした鉄道事業者が存在することはひとえに法制度の不備であるとともに、国鉄分割民営化を通じて本来は社会資本であるべき鉄道を「私企業」にした国の責任であると考える。国鉄分割民営化を強行した国の責任を追及するとともに、「私」から「公」へ、利潤から社会的利益へ、企業経営から民主的共同社会の論理に基づく運営へ、鉄道政策の抜本的転換を求める。

7.同時に、当面取り組むべき課題として、JR北海道が経営状態の悪化を言い訳にせず、公共交通事業者としての責任を果たすよう求める。災害による不通と不採算による廃線提起は別の問題であり、この法案の成立を契機に、JR北海道が公共交通企業本来の姿に立ち返り、直ちに被災線区の復旧に取りかかることを強く求める。もしこの課題が果たされない場合、当研究会はJR北海道の会社清算及びJRグループ7社体制から別の体制への再編も辞さない強い覚悟で今後に臨むことになる。

8.これらの課題を解決するため、当研究会が果たすべき役割はますます拡大している。当研究会は、北海道と日本の鉄道網を守るため、強い決意をもって、今後も全力で取り組むこととする。

 2018年6月26日
 安全問題研究会

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