大阪市営交通民営化・大合理化反対!

 関市政から平松市政に代わっていったん凍結となりながら、橋下市政でまた動き出した大阪市営交通民営化。2018年には、市民の反対のなか、とうとう市営交通が民営化されてしまいました。このコーナーでは、おもに地下鉄の安全運行を確保する立場から、安全問題研究会がなぜ大阪市営地下鉄民営化に反対するのかを明らかにします。(2022.1.2更新)

1.大阪市240万人の足を奪うな! 市営地下鉄・市バス民営化反対!

 橋下市政で大阪市営交通民営化の動きが出た際、大阪の労働組合「なかまユニオン」が作成した反対リーフレットです。

2.大阪メトロの大合理化を許すな! 9.12市民シンポジウム(2021.9.12開催)関連資料

 大阪メトログループ「2018-2025年度 中期経営計画(2020年12月改訂版)」で、2018年に民営化された元大阪市営交通2社(大阪市高速電気軌道株式会社/大阪シティバス株式会社)の大合理化が予定されています。特に大阪メトロでは、駅の要員を2割も減らすという大幅なもので、安全もサービスも大幅な低下が避けられません。

 これを受け、大阪市民有志と地下鉄労働者の労働組合が中心となり、2012年9月12日、「大阪メトロの大合理化を許すな! 9.12市民シンポジウム」が開かれました。その際の資料及び、当研究会が提出した意見をご紹介します。

 シンポジウムのビラ(PDFのみ)

 ●安全問題研究会がシンポに提出した意見 HTML版 PDF版

 ●シンポジウムの報告集(PDFのみ)

3.当研究会が大阪市営交通民営化・合理化に反対する理由(2013.4.14 記) 

 現在、大阪市で水道、市営交通(市バス、地下鉄)の民営化が計画されています。

 民営化すること自体、巨大建設プロジェクトによる財政破綻のツケを市民に回すものであり、とうてい容認できませんが、当サイト管理人は鉄道ファンの立場から、主に安全の観点でこの民営化に反対します。

 大阪市営交通民営化反対ビラ(PDF形式、1.08MB)によって、民営化の問題点は語り尽くされていると思いますが、唯一、市営交通とりわけ地下鉄の「安全」問題が語られていません。

 しかし、民営化は確実に安全切り捨てにつながります。

 ●「民営化で安全切り捨て」ってどういうこと?

 日本の地下鉄は、国と東京都が出資した特殊法人「帝都高速度交通営団」によって経営される「営団地下鉄」と、地方公共団体によって運営される公営地下鉄の2つによって現在の発展を遂げてきました。営団地下鉄を運営する帝都高速度交通営団は民営化され、東京地下鉄株式会社に生まれ変わりましたが、依然とし てこれ以外の地下鉄は全て公営の形態がとられています。

 日本の地下鉄が、建設も開業後の経営も国や地方公共団体、特殊法人などの公共セクターによって行われる「公設公営」の形態を取ってきた背景として、以下の理由が挙げられます。

(1)地方公共団体には地下鉄建設に当たって税の減免や補助金などの優遇措置があり、また地下鉄が主に道路の直下に建設されるという性格に着目して、国有財産(国道)や公有財産(県道、市道など)をほぼタダ同然で利用できる制度が保障されていること

(2)地方自治体が建設する地下鉄には財政投融資などから潤沢な資金投入を行えること

(3)ほとんどの区間がトンネルである地下鉄の維持には地上を走る鉄道以上に経費がかかること

 このために、日本の地下鉄は建設や維持に潤沢な資金が投入できるよう、公共セクターによって建設され維持される必要があるのです。

 鉄道に限らず、電力・水道など巨大な資本投下が必要であるインフラ型産業も同じであり、電力や既存私鉄のように私企業が経営に当たる場合でも、建設はほとんど公共セクターで行うという形が取られてきました。

注)鉄道の場合、日本鉄道建設公団が建設し、完成後に運営する鉄道事業者に引き渡されるケースが多かった。また、電力も日本では私企業が経営しているが、大規模な発電所建設等は政府出資の「電源開発株式会社」が実施することが多かった。

 地下鉄は、開通後の維持にも莫大な経費がかかります。もともと民間セクターが運営するには手に余るものなのです。

 このような不採算事業の典型である地下鉄事業を、不採算だからという理由で民営化すれば、その後には「資金不足によりメンテナンスがきちんと行われない」という事態になることは明らかです。民営化後しばらくは順調に推移しているように見えたとしても、安全に対する投資の減少はしばらく時間が経ってから事故という形で私たちに跳ね返ってきます。そのことは、最近JRで立て続けに発生した重大事故を見ても明らかです。

 そのときになってから、私たちの手の届かない遠いところへ行ってしまった「株式会社」を私たちの手に取り戻すことは大変です。いま、市民による統制を取り得る公営のうちに声を挙げながら、その経営民主化を図ることのほうがより大切なことだと考えます。

 ●「だからといって赤字垂れ流しの現状のままでいいのか。それならば費用対効果の観点から経営が行われる株式会社のほうが市民の負担が少なくていいではないか」とお考えのあなたへ

 地方公営企業として経営されている現在でも、地下鉄事業には企業会計が取り入れられています。資産と負債、費用と利潤の関係はきちんと整理され、経営上の参考とされています。

 安全への投資は、利益が上がらないからといって削っても良いというものではありません。利潤が上がらない事業からは撤退すればいいというものでもありません。少なくても一定の利用客がいる限り、公共サービスとして列車を走らせ続けなければなりません。鉄道事業は、単に採算性だけを物差しに計ることができない産業なのです。

 ●「民営化すれば競争が生まれ、経費が減少するから経営が効率化される」とお考えのあなたへ

 すでに述べたように、鉄道は巨大な資本投下を必要とするインフラ型産業です。開業後もインフラを維持するために莫大な経費がかかるため、そもそも巨大独占に陥りやすくなります。しかも、土地利用型の産業であると同時に公共サービスでもある鉄道は、いったん建設したら撤退することも、より有利な条件を求めて他の場所に移転することもほぼ不可能です。もともとインフラ型産業は競争など発生しようのないものなのです。

注)NTTに対して「新電電」が都市部に限って参入したように、部分的、局地的に競争が発生することはあり得るが、NTTと同じように離島にまで通信網を張り巡らせて対等な競争を挑んだ「新電電」事業者がいないように、条件の不利な地域まで含めての対等な競争はインフラ型産業には発生し得ない。

 競争が全面的で公正な形を取らず、局地的な競争が発生するのみである巨大独占産業で利用者の利益を守るためには、その経営形態は利潤を第一目的としないものである必要があります。地上を走る一般の鉄道以上に経費がかかる地下鉄事業には、一般の鉄道以上に限定的な形でしか競争に勝ち残ることができません。そのような産業を強引に民営化すれば、利潤が先に算定され、それを基に安全投資の額が決定されるような経営に陥る他はなく、そのような経営の先に待ち受けるものは「事故」以外にあり得ないと考えられます。

 地下鉄事業の民営化は、一般の鉄道以上に大きな弊害を持つものだということがおわかりいただけたと思います。

 以上の理由から、当サイト管理人は大阪市営交通の民営化に強く反対せざるを得ません。

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