北海道知事選に当たって~各候補者への公開質問状

 2019年北海道知事選(3月21日告示、4月7日投開票)は、JR北海道の路線問題が最大の焦点といっても過言ではありません。今回、JR北海道研究会を初め、道内各路線の沿線団体は、知事選に立候補した2候補に対し、公開質問状を発しました。各団体の質問状の内容と、それに対する各候補者からの回答を掲載。併せて、回答内容を受けたJR北海道研究会のコメントも掲載しました。

 今回の知事選は、事実上、JR北海道が「自社単独では維持困難」とした10路線13線区の未来を決めるものとなるでしょう。道民有権者の皆さん、ぜひこれを参考に、悔いのない投票をしていただきたいと思います。

 ●根室本線の災害復旧と存続を求める会の公開質問状とこれに対する回答(PDF)

 ●石北本線ふるさとネットワークの公開質問状とこれに対する回答(PDF)

 ●JR北海道研究会の公開質問状とこれに対する回答(PDF)

公開質問状への回答についてのコメント


                                                                            2019.3.20 JR北海道研究会

〇 鉄道の存続・再生の必要を主張する私たちの公開質問状に対して、両候補が正面から受け止め回答を寄せられたことに感謝する。両候補ともに鉄道の果たす役割の重要性を認め、地域の意見を尊重するという基本的な立場が表明されたと考える。

〇 質問1の原因と責任についての質問には、石川氏は国とJRの「責任」を指摘したのに対して、鈴木氏は人口減少とモータリゼーションが「原因」であると指摘し、JRの努力はうながしつつも国の責任についてはふれていない。責任と原因についてのこうした認識の違いは、将来、国に対して向き合うときの姿勢の違いに繋がる可能性があるのではないかと考えられる。

〇 質問2の地域発展と鉄道の関係について、鈴木氏はJRの重要性を認めつつも、必ずしも鉄道に限定せず地域交通のあり方等を幅広く検討するとしているのに対し、石川氏は少子高齢化・過疎化が進む地域社会を維持するための鉄道の役割を重視しており、鉄道を地域再生に生かすという視点が注目される。

〇 質問3の13線区と並行在来線については、設問が必ずしも明快でなかったため質問2と重なる部分が多かったが、石川氏が並行在来線について道がリーダーシップをとって議論を尽くすと回答したことが特に注目される。

〇 質問4の今後の鉄道存続の枠組みについて、鈴木氏は、経営安定基金の枠組みの問題点を指摘したうえで時代の変化に即した経営支援策の再構築を主張している。ただ、その支援策の内容が制度的枠組みに踏み込む考えがあるかは明示されておらず、もしなにがしかの一時的追加財政支援を国に要請するだけであれば、JR問題の解決は不可能であると危惧する。これに対して石川氏は、鉄道を公共インフラとして位置づけ、中長期的には国が「下」を持つ上下分離を展望するとしている。これはEU諸国の事例などもふまえた当研究会の基本的な提言と大枠で一致するものである。

〇 質問5の決意と展望について、鈴木氏は「検討・協議を早急に進める」とし、また鉄道とバスを同列において公共交通の利便性の向上を図るとしている。これは実質的に地域協議会に早急な決断を促し、バス転換を推進することに帰結するのではないかとの危惧を禁じ得ない。これに対して石川氏は「地域交通網形成計画」策定し、市町村と連携して鉄道の存続と活用をめざすと述べており、基本的な立場の違いが示されていると考える。

〇 全体を通じて
1.鈴木氏の立場は、必要な鉄道は残すとしながらも、公共交通は必ずしも鉄道でなくてもよいという立場であるのに対して、石川氏は北海道の地域の将来のためにも鉄道を生かしてゆくべきだと主張している。

2.すでに述べたように、部分的な追加財政支援だけでは北海道の鉄路の維持は困難であり、鉄道に関する持続的な制度的枠組を国に求めていくことが北海道知事のもっとも重要な役割であると考えるが、この点について具体的に述べたのは石川氏のみであった。

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