<安全問題研究会声明>
レール検査データ改ざん判決 企業犯罪を断罪した司法
~JR北海道は判決を真摯に受け止め、強権的企業体質改めよ~

印刷用PDF版

 2013年、JR函館本線大沼駅付近で貨物列車が脱線、その後、レール検査データに「改ざん」があったとして、保線業務の管理的労働者3名と法人としてのJR北海道が鉄道事業法違反(虚偽報告)、運輸安全委員会設置法違反(事故調査妨害)容疑で起訴されていた、いわゆるレール検査データ改ざん事件の判決公判で、2月6日、札幌簡裁(結城真一郎裁判官)は、JR北海道を罰金100万円とする一方、被告労働者3名を無罪とする判決を言い渡した。JR北海道は、両法における両罰規定(企業犯罪において犯罪行為を命じた企業も訴追可能とする規定)に基づいて起訴されていたものである。

 判決は、可搬式軌道変位計測装置(トラックマスター、略称トラマス)の検査データを検査表から台帳に転記する過程において、通り変位(遠心力による線路のずれ)の数値が次第に小さく書き換えられた経緯は認めたものの、改ざんの意図があったとする検察側の主張や、被告労働者が通り変位の数値に一貫して関心を示さないまま検査データ数値の書き換えを黙認していたことを改ざんの根拠とする検察側の主張をいずれも退けた。現場で起きていたのは保線不良による軌間変位(2本のレールの幅の拡大)であり、車輪全体が2本のレールの間に落下していた現場状況から、軌間変位が事故の主因であり、通り変位は原因のひとつを構成するとしても直接の主因ではないとする被告弁護側の主張を採用。「現場の曲線半径が400メートルではなく、もっと小さいのではないか」とする多くの現場労働者の裁判過程における証言を重視し、数値の書き換えがむしろ誤った数値の「補正」であった可能性を否定できないとした上で「疑わしきは被告人の利益に」との刑事裁判の原則に基づいて被告労働者を無罪としたのである。

 当研究会は、昨年11月に行われた被告側最終弁論を傍聴する中で、その内容と論理構成に破たんがないことを確認するとともに、多くの保線労働者の証言を基にして、実際はJR北海道が金をかけずにスピードアップを実現するため、不当に曲線半径を実際より大きくごまかすことで速度制限を緩和した企業犯罪ではないかとの仮説を立てた。この仮説についての事実認定こそ行われなかったものの、今回の判決内容を精査すると、裁判所が当研究会のこの仮説と同様の疑いをJR北海道に対して抱いたことはほぼ確実といえるのであり、当研究会の仮説は判決を通じて事実上証明されたものと言うべきである。

 一方で、判決はJR北海道について「従業員らを管理監督する立場にありながら、保線所長を含む多数の従業員が複数回にわたって虚偽報告もしくは検査忌避に関与することに至らしめたもの」であり「犯状はかなり悪く、その刑事責任は重い」と断罪。虚偽報告罪について鉄道事業法が認める最高刑である罰金100万円の判決とした。結城裁判官は「安全よりも列車運行を最優先するJR北海道の姿勢が事故を招いた。今後このようなことが二度とないよう真摯に反省し安全確立に万全を尽くすよう求める」としてJR北海道に反省を促した。曲線半径をごまかしてまでスピードアップを求め、現場労働者に虚偽のデータに基づいた保線作業を強要、挙げ句の果てに脱線事故を起こしたJR北海道の企業犯罪がついに司法の場で断罪されたのだ。

 JRその他の犯罪企業と闘う労働者・市民にとって今回の判決が画期的な意義を持つのは、なんと言っても企業にのみ刑罰を科し、強権的企業体質の下で社命に抗えなかった現場労働者を無罪としたことだ。福知山線脱線事故をめぐり、JR西日本と闘ってきた遺族はもちろん、当研究会も繰り返し求めてきた「組織罰制度」を事実上実体化させる先進性をこの判決は持っている。当研究会は今回の判決をてことして、今後は罰金額を企業罰として実効ある水準に引き上げる闘いを追求していく。検察側、被告のうち敗訴したJR北海道に対しては、判決を真摯に受け止め、控訴を断念するよう求める。

 安全投資を削ることでスピードアップを追求してきたJR北海道の冒険主義は、2011年、石勝線列車火災事故によって破たんした。JR北海道は、この事故を表向き「反省」する振りをしながら、まともな収支さえ公表しないまま経営危機を演出、「自社単独では維持困難」10路線13線区を切り捨てる意思を露わにしてきた。路線維持を求める沿線住民・自治体の声に一切耳を傾けず、一方的に廃止の結論だけを押しつけようと策動するJR北海道の姿は、脱線事故を引き起こしたウソまみれで強権的企業体質の路線問題における最も醜悪な反映である。当研究会はJR北海道に対し、このような強権的企業体質を改めるとともに、一方的廃線強要ありきではない、真の意味で沿線住民・利用者本位の地域協議を誠意をもって行うよう、改めて強く求める。

 国鉄労働者1047名の不当解雇以来、当研究会は人生の半分をJRとの闘いに捧げてきた。この闘いの歴史の蓄積、そして当研究会の不屈の意思を甘く見るなら、JR北海道にとって路線問題の行方はきわめて厳しいものになるであろう。10路線13線区の中でも、とりわけ切り捨ての意思が明確な5線区に対し、JR北海道が隠蔽やごまかし、だまし討ちや脅迫を続けることで当研究会の闘う意思を挫くことができると考えているなら、重大な誤りであると改めて警告する。

 当研究会は、全国JRグループの安全とサービスを引き続き厳しく監視していく。JR北海道に対しては、これに加え、全路線維持を求めて最後まで闘い抜く決意を、この機会に改めて表明する。

 2019年2月10日
 安全問題研究会

声明・コメントのトップに戻る  サイトトップに戻る