<安全問題研究会声明>
JR西日本歴代3社長への再度の「無罪」判決に抗議する
~司法も認定した組織罰法制整備の国民運動を

印刷用PDF版

 2005年4月25日、JR福知山線で快速列車が脱線・転覆、107名が死亡した尼崎事故に関し、3月27日、大阪高裁は、業務上過失致死傷罪で強制起訴されていたJR西日本歴代3社長(井手正敬、南谷昌二郎、垣内剛の各被告)に1審に引き続き無罪の判決を言い渡した。再び国策企業JRを免罪した司法は、「これだけ多くの犠牲者を出しながら、なぜ誰ひとり責任を問われないのか」という遺族・被害者の疑問に今回も答えなかった。

 判決は、3社長が有罪となるためには「一般的な大規模鉄道事業者の取締役の立場にある一般通常人と同様の情報収集義務に基づいて、因果関係に基づいた具体的な予見可能性が証明されることが必要」と有罪のハードルを極めて高く設定。「単なる事故の不安等では足りない」と指定弁護士の主張を退けた。速度照査型ATSが設置されているカーブは危険だから安全対策を講じるべきだった、とする指定弁護士側の主張に対しては「ATS設置基準を満たしているからと言って直ちに危険とはいえない」、また普通鉄道構造規則での通常の基準に反する半径304mのカーブは違法とする指定弁護士側の主張に対しては「普通鉄道構造規則では、地形上等のためやむを得ない場合は半径160mのカーブまで認めている」「このようなカーブは全国至る所にある」とした。半径160mのカーブまで認められる「地形上等のためやむを得ない場合」とはどのような場合なのかの具体的基準も示さず、「同じような場所がどこにでもあるから違法ではない」とするのは司法の居直りだ。この論法を認めるなら、そもそも鉄道に関するすべての安全規制の体系が根底から崩れ去ることになる。

 1時間半に及んだ判決言い渡しのなかで注目すべきなのは、(1)「JR西日本は我が国を代表する大規模鉄道事業者であり、安全対策では他の鉄道事業者をリードすべき」とした指定弁護士側の主張を認めたこと、(2)「法人組織としてのJRの責任を問うのであれば(指定弁護士側の主張は)妥当する面がある」と裁判長が判決理由の最後にわざわざ判示したことだ。(1)は、今後相次いで判決を迎えることになる原発事故裁判の中で、原告側が「東京電力のような代表的企業は通常の企業の安全対策程度では責任を免れない」と主張する根拠を得たことになる。また(2)は、遺族の一部が求めている組織罰法制(一例として、企業に対する罰金刑を規定した英国の「法人故殺法」がある)が整備されれば企業を有罪に問える、との司法の見解を示すものだ。企業経営者個人の罪しか問えない現行刑法に対する問題意識が特定の一裁判官だけにとどまらず、司法内に広がりを見せていることを窺わせるものであり、今後に向け一筋の希望といえる。世界一企業が活動しやすい国を目指す安倍政権との対決姿勢を明確にしながら、グローバル企業の手を縛り、あるべき責任を負わせていく組織罰法制の整備に向けた運動展開が今後の課題であること、そのために運動側の構想力、組織力、行動力が問われていることを判決はいっそう浮き彫りにした。遺族からのこの問いに、私たちは全力で応えなければならない。

 福知山線事故から10年、日航機御巣鷹事故から30年を迎えた節目の今年、JR体制は崖っぷちに立たされている。安全問題が噴出する北海道、どの面から見ても先の見通しのないリニア中央新幹線の建設を強行する東海、経営安定基金を飲み込んだまま上場へ向けひた走る九州。華やかな北陸新幹線金沢延長のニュースが伝えられる中で、ついにJR在来線だけでは東日本各地から北陸に到達するのも困難なほど在来線鉄道ネットワークは引き裂かれた。新幹線だけが発展すればいいという風潮の中で、地方創生の掛け声とはうらはらに、地方はついにその最後の命脈を絶たれようとしている。事故遺族の心の傷はなお癒えておらず、節目の年を「風化に向けた通過点」ではなく、新たな闘いの結集点とすることが全国民的課題である。

 安全問題研究会は、組織罰法制こそ「責任社会ニッポン」に向けた突破口であるとの認識に立ち、その法制化を従来にも増して強く求めていく。地方切り捨て、東京一極集中を加速するだけの新幹線・リニアばらまき体制との対決をあらゆる機会を捉えて訴え続ける。限界に来た「命よりカネ」のJR体制から真の「公共交通」への転換に向け、今後もあらゆる努力を続ける。

 2015年3月28日
 安全問題研究会

声明・コメントのトップに戻る  サイトトップに戻る