<安全問題研究会声明>
「法の番人」放棄し正社員ゼロ時代に道開くJAL訴訟不当決定を糾弾する
かつてない支援運動の盛り上がりで被解雇者を職場に戻そう
2010年末に日本航空を整理解雇された労働者165名が職場復帰を求めた訴訟で、2月4日から5日にかけ、最高裁は、客室乗務員・パイロットいずれの訴訟も上告を不受理とする不当決定を行った。実質審理をなにひとつ行わず、事実上の門前払いだ。
稲盛会長(当時)みずから165名の解雇は必要がなかったと発言する中で、被解雇者が会社の方針に反対していた特定の労働組合員に集中しているなど不当労働行為の存在は明らかであり、最高裁には審理すべき事実は山ほどあった。最高裁は、そのような事実に注意を払うこともなく、労働者が「単なる法令違反を主張」(客室乗務員裁判決定文)しているに過ぎないとして上告不受理を決定した。法の番人たる最高裁が法令違反の有無を審理せずにいったい何を審理するのか。今回の決定は、最高裁の職務放棄であり法の番人としての自殺行為である。
今回の決定はまた、安倍政権が「世界で最も企業が活動しやすい国」のスローガンを掲げ、政権の御用学者が新年早々「正社員をなくせ」と放言、残業代ゼロ法案の提出と労働者派遣法改悪が狙われる情勢の中で行われた。労働者総奴隷化に向けて日本社会を掃き清める役割をみずから担い、安倍政権を援助する最高裁を当研究会はこの上ない怒りをもって糾弾する。今回の決定が、大飯原発訴訟などを通じて司法へのいちるの希望を取り戻しかけていた市民の失望と怒りを呼び起こすことは必至であろう。
JAL訴訟ではいまだ1人の職場復帰も1円の賠償も実現しておらず、このまま闘いを終わらせることはできない。不当解雇された国鉄労働者が裁判闘争で多額の賠償を実現し、また、不当解雇された社会保険庁の公務労働者の約3分の1が人事院闘争を通じて職場復帰を勝ち取ったように、JAL労働者も政府・グローバル資本に対し、解雇が高くつくことを思い知らせる闘いをしなければならない。そのためには、原告団にも従来の運動の枠組みを超えるためのさらなる飛躍が求められる。支援運動の力でJALを解決の場に引きずり出し、被解雇者の職場復帰を実現するため、これまでに倍する支援運動の高揚を勝ち取ることが必要だ。
JAL原告団とは別に、被解雇者が起こした関西訴訟では、大阪地裁で労働者が勝訴するなどの動きも見られる。こうした訴訟を支えていくことも私たちの果たすべき課題である。
御巣鷹事故から30年の今年は日本の航空業界にとって節目の年である。慰霊登山を続ける多くの関係者が「御巣鷹の鎮まりを感じたことはない」と言う。真の原因が究明されないまま30年を迎えようとしているのだから当然だ。ありもしない急減圧があったとうそぶいて真の事故原因を隠蔽し、矛盾だらけの事故報告書を公表して恥じない日本の航空行政を国民本位に転換できない限り、520柱の無念が晴れることはない。
今回の不当決定により、JAL争議の司法による解決の道は閉ざされた。だが、司法の不当な決定が当研究会の闘う意思を挫くことはない。当研究会は、今年、安全問題を再びクローズアップし世論を喚起すること、安全問題で積極的な行動と発言を続けてきた熟練労働者の職場復帰に向けた支援運動の高揚を勝ち取ることに引き続き努力する。安倍政権がもくろむ労働者総奴隷化を阻止するとともに、真に国民本位の公共交通行政を実現するため、全力をあげる決意である。
2015年2月10日
安全問題研究会