2010年末の「整理解雇」により日本航空を追われた165名の労働者が解雇撤回を求めて提訴したJAL被解雇者をめぐる訴訟で、東京高裁は、6月3日客室乗務員、6月5日乗員の判決で、いずれも労働者らの控訴を棄却、会社側の整理解雇を容認する判決を出した。5月21日、大飯原発運転差し止めを認めた福井地裁判決によってよみがえるかに見えた司法は、再びその腐敗ぶりをさらけ出した。安全問題研究会は、評価すべき点など全くない、暗黒判決と言うべき不当きわまる今回の判決に強く抗議するとともに、直ちに上告の意思を示した原告団を支持し、さらなる支援を呼びかける。
今回の判決は、事実上、管財人の手に渡った「再建会社」には労働法は全く適用されず、管財人・会社は何をしても許される、と宣言するものであり、「再建会社」を労働法の治外法権下に置くことを公然と認めるものであった。このような事態を放置すれば、ますます労働者を整理するための「偽装倒産解雇」戦術がまかり通るばかりとなる。また、司法がこのような治外法権を認め、法の支配を破壊するならば、それは必ず市民の司法不信として司法自身に跳ね返るであろう。
5日の乗員判決は、航空機乗務員について職務従事経験が「航空機運行の安全」に寄与するとし、また「運行従事経験の多い者が減少することは、運行の安全性確保の点において一定の影響を及ぼさないとはいえない」として、ベテラン乗務員の安全運行への貢献を認めながら整理解雇を容認した。これは、会社の「効率的経営」のためなら乗客は事実上死んでもかまわないと宣言しているに等しく、司法による犯罪だ。
3日の客室乗務員訴訟を担当した大竹たかし裁判官は、いわゆる判検交流で任官した人物であり、法務官僚時代は大臣官房訟務総括審議官を務めた。訟務総括審議官とは、法律の規定により、国が当事者(原告または被告)となる訴訟で国側代理人として訴訟事務を担当する官僚であり、時には国側代理人として法廷に立つこともある。いわば、3日の客乗裁判は「国側代理人が法衣を着て判決を書いた」ものであり、一片の正当性もない。三権分立の否定であり、行政による司法乗っ取りを意味する判検交流の中止も含めた抜本的な司法制度改革を行うときに来ている。
今年2月、首都圏を襲った記録的な大雪は、JAL123便墜落現場である御巣鷹の尾根にも大きな被害をもたらした。犠牲者の氏名が記された多数の銘標が折れ、山小屋は半壊した。被害の修復に当たったのは多くの日航労働者だった。御巣鷹の山開きが、例年より1か月遅れながらも実現できたのは、事故の風化と闘い、自社の負の歴史と真摯に向き合いながら後世に語り継ぐことを決意した多くの労働者たちがいるからである。政府・司法・経営が一体となった効率化、安全切り捨てから乗客を守り抜こうとする労働者たちの闘いが、現場の安全を辛うじて支えているのだ。
来年、2015年は御巣鷹から30年だ。安全のために発言し、行動し続けた経験豊かな労働者を守り、職場に還すこと。そして利益第一、安全軽視の「効率的経営」を進める政府・司法・経営に対し、安全を求める国民各層の声を突きつけていくことが私たちの課題であり、520名の貴い犠牲に応える唯一の道である。当研究会は、引き続き、そのための行動を続けていくことを表明する。
2014年6月8日
安全問題研究会