<安全問題研究会声明>
9回目の「4.25」を迎えて~JR体制崩壊のカウントダウンが始まった
今こそJR再編、再国有化へ総力結集を
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乗客・乗務員107名が犠牲となったJR福知山線脱線事故から4月25日で9年を迎えた。安全問題研究会は、今年も尼崎市現地での追悼行動に参加するとともに、「ノーモア尼崎事故! 生命と安全を守る4.19集会」においてJR北海道問題に関する報告を行った。9回目の追悼の日を迎え、改めて犠牲者に哀悼の意を表するとともに、今なお治療過程にある負傷者にお見舞いを申し上げる。
この1年間は、「分割民営化」から27年を迎えたJR体制の矛盾が、ついに「最終的解決」に向け爆発を開始した年であった。JR西日本歴代3社長の強制起訴裁判を不当きわまる「全員無罪」の反動判決で抑え込もうとする支配層の野望とは裏腹に、JR北海道の車両や施設・設備の安全崩壊は覆いがたいものとして市民の前にさらけ出された。保線に拠出するカネもなく、次々に列車が脱線していくJR北海道を尻目に、JR東海は援助を行うどころか、9兆円もの資金を自前で拠出してリニア建設に向け暴走し始めた。しかも、豪雨で長期不通になったままの名松線の復旧費をすべて地元自治体に押しつけた上でのリニア建設だ。石破自民党幹事長は昨年11月、「JR北海道は誰が経営しても無理だ」と述べた。分割民営化を仕掛けた自民党自身がJR体制再編の可能性に言及せざるを得ないほど、事態は重大局面を迎えている。
JR体制からの民心離反も深刻だ。4.25を前にメディアが行った世論調査によれば、福知山線脱線事故遺族の6割がJR西日本を「安全優先とは思わない」と回答。同じく遺族の7割が「社長の無罪判決に納得できない」と回答、JR・司法を断罪した。
企業犯罪に対し、組織に罰則を与える「組織罰」制度については、遺族の6割が導入に賛成と回答した。今年2月には、福知山線事故の遺族が「組織罰を求める勉強会」を立ち上げ、導入に向けた最初の一歩が始まった。すでに、福島第1原発事故の責任追及のため、政府・東京電力関係者を刑事告訴して闘っている福島原発告訴団と福知山線事故遺族とは日常的に情報交換をしている。「企業が世界一活動しやすい国」というアベノミクスの旗の下、無法の限りを尽くすグローバル企業に適切な制裁を科せるようにすることは、今や自民党と経済界を除く全国民の悲願である。
今年4月、東日本大震災で甚大な被害を受けた三陸鉄道が3年ぶりに全面復旧したが、その復旧費には全額、国の補助金が充てられた。この背景には、2007年に制定された「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」(地域交通活性化法)があり、赤字鉄道事業者が上下分離を実施しやすくなる体制がこの法律により整えられた。現在国は、公益性の高い鉄道事業者とはいえ、民間事業体に対して税による全面補助はできないとの姿勢を崩していないが、三陸鉄道は、あらかじめ鉄道施設を自治体に譲渡していたため、全額補助金による復旧が可能となったのである。
国民を切り捨て我が物顔で振る舞う企業から、鉄道をはじめとする公共交通を「公共財産」として取り戻すことの重要性をこの事例は教えている。最も経営困難な地方の中小私鉄から始まった「民から公へ」の試みは、幾多の消長を繰り返しながらも今後、地域が主体となって公共交通を取り戻す動きとして揺るぎないものとなるだろう。
分割民営化から27年――多くの鉄道労働者を解雇・自殺に至らしめ、おびただしい乗客の命を奪った「国鉄改革」について、政府・自民党にもJRにも反省は全く見られない。しかし事実がすべてを語る。JR北海道で次々と列車が脱線していく一方で、公共財産として未曾有の災害から復旧を遂げた三陸鉄道――「官から民へ」に象徴される民営化路線は、少なくとも鉄道・公共交通に関する限り、無残に敗北したのである。
2014年、私たちは引き続き重大な課題に直面している。1つには、JR北海道に安全を取り戻す闘いである。安全崩壊が民営化と地域分割に起因している以上、JR体制の再編は不可避である。私たちは、昨年秋の東京団結まつりにおいて呼びかけられたとおり、当面の緊急課題として、技術の継承を不可能にする外注化をはじめ合理化を直ちに中止し、運転・施設を問わず経験豊富な職員を大幅に増員すること、また、国鉄分割民営化の際の労働組合差別を反省して各組合を平等に扱い、安全を求める声に耳を傾けるよう強く求める。その後の究極的な課題として、信楽高原鉄道事故(1991年)以来の鉄道事故は分割民営化路線がもたらした必然的なものである以上、破綻した分割民営化を改め、全国を一体的に運営する公共鉄道機関の復活・JRの再国有化を重ねて要求する。また、この闘いのため、労働運動を再生させることも不可欠の課題だ。
2つ目は、JR東海が強力に推進するリニア建設を中止させる闘いである。すでに橋山禮治郎氏が指摘しているとおり、リニアは過大な需要予測に基づいており、過去、ゼネコン主導で繰り返された無駄な公共事業と同じ経過をたどっている。環境破壊も伴う失敗必至のプロジェクトであり、福島第1原発同様、国策として失敗時には国民にツケが回される。求められているのは人口減少時代に即した小回りの利く交通機関であり、間違ってもリニアでないことを、当研究会はこれからあらゆる場で暴露していく計画だ。
3つ目の課題は組織罰制度の導入と、国鉄を葬った政府、自民党、経済界の責任を追及する闘いである。地域交通活性化法の制定は、国による国鉄「改革」のなし崩し的修正であり部分的否定に他ならない。最大の責任者である国のごまかしを許さず、責任を追及することが必要だ。
27年前、矛盾と危険をはらんだままごり押しされた国鉄「改革」と、それによって生み出されたJR体制は、どの面から見ても限界に直面しており、これから数年で再編に突入するだろう。当研究会は来るべき時代に備え、「民から公へ」を基本とする公共交通とJRの再編に向けた諸活動をいっそう発展・強化させるため、今後とも奮闘する決意である。
2014年4月25日
安全問題研究会