<安全問題研究会声明>
JR西日本歴代3社長への「無罪」判決に抗議する
~法制度の限界あらわ、今こそ組織罰制定からJR安全再建の国民運動を~

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 2005年4月25日、JR福知山線で快速列車が脱線・転覆、107名が死亡した尼崎事故に関し、本日、神戸地裁は、業務上過失致死傷罪で強制 起訴されていたJR西日本歴代3社長(井手正敬、南谷昌二郎、垣内剛の各被告)に無罪の判決を言い渡した。安全問題研究会は、国策企業におもね り、企業犯罪をことごとく免罪にしてきたこれまでの日本の恥ずべき歴史を上塗りするこの判決に強く抗議する。

 この裁判は、すでに報じられているとおり、神戸地検がいったんは不起訴とした後、被害者の申し立てにより、神戸第1検察審査会において審査、同 審査会の2度にわたる起訴相当議決の結果、改正検察審査会法の規定に基づき3被告が強制起訴(業務上過失致死傷罪)されていたものである。昨年1 月の山崎正夫・JR西日本元社長に対する裁判と同じ裁判長(宮崎英一裁判長)によるものであり、判決は当研究会にとって想定内であったが、当研究 会もまた、遺族・被害者と同様、この判決を受け入れることはできない。遺族が「即時控訴」を決意したのは当然である。当研究会はこの決意に応え、 今後も最大限の支援を続ける。

 閉廷後の記者会見で、無罪判決の要因として、発言した遺族全員が「組織罰を裁くことのできる法制度の不備」を挙げていることに私たちは注目する 必要がある。「組織罰を裁ける新たな法律を制定しなければ、これから先も企業犯罪が起きるたびに、同じ苦しみを味わう人がどんどん出てくる」「組 織罰を設ける方向に根本的に考え方を変える時期に来ている」との遺族の言葉は、福島原発事故を通じて全国民が同じ課題に直面している今、これまで よりいっそう重みを増している。遺族の苦しみに寄り添うことなく、国策企業・JRの主張だけを一方的に採用した司法に対し、徹底的な批判を加える 必要があることはもちろんだが、企業犯罪に対し、適時適切な立法措置を講じてこなかった立法府・国会の不作為・怠慢こそ私たちは根本から問わねば ならない。

 とはいえ、グローバル大企業が支配する日本社会で、みずからの手に手錠をかける企業犯罪処罰立法を政府・経済界がみずから提案することは決して あり得ない。それどころか安倍政権は、日本を「世界で最も企業が活動しやすい国」にするとのかけ声の下、企業の無法状態をこれまで以上に強化しよ うとしている。広範な市民が手をつなぎ、ともに声を上げながら行動する闘いの中でしか、この狙いを阻止し危機を突破することはできない。

  「控訴して、長く闘いを続けることが大切だと思っている。そうすることによって、世論が高まり、組織罰を裁く新法がなければダメだという気運が盛り上がっ てくる」と遺族のひとりは述べている。これは、私たち市民に向けた連帯の呼びかけだ。当研究会は、福島原発事故における原子力ムラへの適用をも見 据え、企業犯罪を裁くことのできる法制度の整備を求める国民運動を提起する。さしあたり、2007年、英国で制定された法人故殺法(人を死亡させ た企業・法人に対し、検察官の請求で裁判所が上限のない罰金刑を科することができる)がそのモデルとなりうるであろう。

 国鉄分割民営化から28年、今回の裁判は、JR北海道で車両や線路の安全が破局的崩壊の危機に瀕する中での判決となった。世論の批判が民営JR 体制に波及しないよう、メディアや「専門家」を動員した防衛キャンペーンが始まる兆しも見える。しかし、彼らの思惑を超えて事態は動いている。か つてはタブーだったJRへの批判が連日メディアを賑わし、著名鉄道アナリストまでがメディアでJR北海道の再国有化を主張するまでになった。当研 究会が本部を置く北海道では、今、JRの安全もろとも地方が切り捨てられようとしていることに市民の怒りが渦巻いている。

 民営JR体制は破たんした。逆転のチャンスが生まれている。尼崎事故遺族の呼びかけに応え、企業犯罪処罰のための法制度の整備を政府・経済界に 迫る闘いを始めよう。JR北海道の危機を民営JR6社体制の見直しから再国有化につなげるため、すべての市民は全面反撃に立ち上がろう。当研究会 は、この闘いの先頭に立つ決意である。

 2013年9月27日
 安全問題研究会

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