(コメント)日本航空被解雇者による提訴に当たって
〜史上最悪の首切りと闘う被解雇者を断固支持する

1.2010年12月31日、日本航空と管財人・企業再生支援機構は、労働組合、各界支援者らの強い反対を押し切り、165人の整理解雇を強行した。これ に対し、日本航空の会社更生法適用から1年となる2011年1月19日、被解雇者のうち146人が解雇撤回を求めて提訴した。安全問題研究会は、不当解雇 と闘い抜こうとする被解雇者らを強く支持する。

2.労働者にとって、もとより解雇は不当なものだが、今回の整理解雇は、やむを得ない最後の手段として実施される整理解雇の条件を制限的に規定した整理解 雇の4要件のどれにも合致しない、一片の正当性もないものである。希望退職必要数を大幅に超過してなお強行された解雇は「人員整理の必要性」を満たさない し、労働組合の合意もなく実施された解雇は「手続の妥当性」の要件も満たさない。「被解雇者選定の合理性」に至っては論外であり、被解雇者の大半が、闘う 労働組合である日本航空乗員組合及び日本航空キャビンクルーユニオン(CCU)に集中している。整理解雇は意図的な闘う労働組合潰しであるとともに、かつ て国鉄当局によって国労など闘う労働組合に仕掛けられた攻撃と同じであると断定する以外にない。

3.今回の整理解雇は、その悪質性、大規模さ、経営者の非人間性などあらゆる意味において国鉄1047名解雇に匹敵する空前の規模のものになる。航空労組 連絡会が指摘しているように、「金融支援を受けた会社は、憲法や労働法などの一切の法的拘束を離れて人員整理ができるという歴史的な前例」を作ろうとする ものである。もしこのような整理解雇がまかり通るなら、すべての経営者が「企業再生支援機構の支援下に入ればいつでも誰でも好きなように解雇できる」と考 えるようになり、労働法と労働者の権利は全面解体するであろう。当研究会は、すべての労働者に、この解雇を自分の問題としてともに闘うよう呼びかける。

4.すでに昨年の日本航空破たんから当研究会が何度も指摘しているように、日本航空破たんの原因は乱脈経営を続けた幹部、無駄な空港建設を続け、開港後も 不採算空港を維持するため日本航空に就航を強要した自民党政権と国土交通省、空港利権に群がったゼネコンにある。経営陣は、米国の要求に屈した無駄な航空 機の購入、巨額の損失を出し続けた燃油ヘッジなどの投機取引、パックツアーのキックバックによる不当廉売、「クレジットメモ」と呼ばれる不透明な機体購入 費の経理操作など乱脈経営の限りを尽くした。2005年に安全上のトラブルが続いているさなかにも、安全対策より自己保身と派閥抗争に明け暮れた。日本航 空の経営破たんは、こうした乱脈経営の明らかな帰結である。

5.それにもかかわらず、経営陣は誰ひとり責任を取ることなく、日本航空内で互いにもたれ合いながらポストをたらい回しにしてきた。経営陣は、みずから招 いた経営破たんの責任を取ることもなく、労働者にその責任を押しつけて解雇で危機を乗りきろうとしている。一部報道によれば、管財人弁護士は破たん後も日 本航空から月額580万円もの報酬を受け取っているとされており、厚顔無恥もここに極まったと言わなければならない。

6.今回整理解雇の対象となった労働者の大部分は、1985年の御巣鷹事故当時、20歳代の青年労働者として大きな衝撃を受け、安全を誓った人たちであ る。それから25年間、日本航空は乗客の死亡事故だけはなんとか食い止めここまで来たが、その陰には歯を食いしばりながらそれぞれの職場、持ち場で安全に 尽くしてきた労働者の献身的努力があった。経営陣と管財人は、25年間、危機が叫ばれながらも日本航空で安全が守られ続けてきたのを誰のおかげだと思って いるのか。もし日本航空が彼らをこのまま失うなら、安全に与える打撃は計り知れないものとなるだろう。

7.経営陣が、この史上最悪の大量解雇で事態を乗り切れると考えているなら、当研究会はそれが重大な誤りであると警告しなければならない。24年前、 1047名を首切りしたJRでは尼崎事故が起き、国鉄総裁室長として首切りの指揮を執った井手正敬・JR西日本元社長はいよいよ今年、107名死亡の罪で 法廷に引き出される。日航労働者はたとえ何年かかっても、国鉄労働者と同じように勇気をもって闘い、首切りの首謀者たちを追及し続けるであろう。

8.日本航空の無慈悲で非道な整理解雇に対し、被解雇者への国際連帯は大きく広がっている。IFALPA(国際定期航空操縦士協会連合会)は「この危機的 状況を解決するために、JALが誠実であり忠実な従業員を再び職責に就かせ、再生の途に就くために日本政府に対し仲裁に入ることを要求」している。 ITF(国際運輸労連)は「CCUへの支援を強化」するとしている。

9.当研究会は、御巣鷹の尾根で被害者とともに泣き、被害者とともに苦しい日々を過ごしながら安全のために尽くしてきた被解雇者全員を職場に戻すことが真 の日本航空再建であることを固く信ずる。そして、すべての遺族と利用者を裏切った経営陣・管財人の罪を今後も告発しながら、被解雇者とその裁判闘争を強く 支持・支援し、ともに闘い抜く決意である。

2011年1月23日
安全問題研究会

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