JR不採用問題の最高裁和解に関する声明
1987年の国鉄分割・民営化の際に国鉄清算事業団に移され、1990年、清算事業団からも解雇された国労組合員らの不採用問題を巡って、不採用者
910名のうち904名と独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(旧・日本鉄道建設公団)との間で2002年の第一次提訴以来続いてきた裁判闘争
は、2010年6月28日、最高裁での和解を迎えた。これにより、JR不採用問題は政治の場に続いて法律上でも和解を迎えた。
当研究会の政治解決に関する考え方は、すでに2010年4月20日の声明に発表した通りであり、繰り返さないが、23年間に及んだ「戦後最大の労働問
題」が大きな区切りを迎えたことに対しては感慨無量の思いである。
しかし、当研究会は、今回の和解に当たって発表された国土交通大臣談話に対し、強く抗議す
る。「国鉄改革が…大きな痛みを伴」ったことは当然としても、
「鉄道を我が国の基幹的輸送機関として再生することを目的とした戦後最大の行政改革」「国民に対して大きな成果をもたらした」とする見解には、全く同意で
きない。
当研究会にとって国鉄改革は「百害あって一利なし」と言うべきものである。それは、公共輸送の使命を投げ捨てて地方の足を奪い、新幹線開業に伴う並行在
来線切り捨ては、鉄道の先人たちが幾多の苦労に耐えて作り上げた全国在来線ネットワークを破壊した。利益優先となったJR体制の下で安全は崩壊し、150
名
を超える乗客の命が奪われた。首都圏では、労働組合のストが頻繁に行われていた国鉄時代でさえあり得なかった日常的な列車の運休・遅延が多発している。
国民の共有財産であった国鉄を解体し、誰も望まない鉄道へと改変させたこのようなエセ改革が「大きな成果」などであるはずがなく、このような恥知らずの
談話を発表した国土交通省は、すべての被解雇者と事故犠牲者、そして国民の前に謝罪すべきである。
JR不採用問題の和解に当たり、残された課題は雇用である。不当労働行為によって生まれたJR各社は、最後まで「再雇用拒否」を貫こうとしている。しか
し、JR各社に対する各界各層の世論がこれほど厳しい時代はかつてなかった。JR各社が、これまでのような国民不在の経営を続けることはできない。当研究
会は、国民各層と連携し、引き続きJR各社に法令遵守と再雇用を厳しく求めていく。
和解に応じなかった国労組合員6名、政治解決を拒否した動労千葉組合員9名の支援も今後の課題である。これらの原告は様々な意見の違いを抱えているが、
解雇撤回を求めて、名誉のために闘い続けるこれらの原告を守ることは日本の労働運動と国鉄闘争関係者にとって義務である。
破壊されたネットワークと地域の足の再生、そして安全・安定輸送の復活は、公共輸送に責任を持つことのできる公的事業体への転換なくして実現することは
できない。国鉄闘争との関わりの中で培った思想とそれに対する確信を胸に、当研究会は、国鉄「改革」が生み出した新自由主義と首切り・民営化路線の転換を
求める闘いを今後も続ける。
2010年7月2日
安全問題研究会