羽越線事故を巡る東日本社員の不起訴処分に関するコメント


1.2005年12月25日、JR羽越本線砂越〜北余目間において、強風により列車が脱線・転覆し、乗客5名が死亡した事故について、2010年3月19 日、山形地検は、事故当時のJR東日本新潟支社運輸部輸送課指令室長、指令室副課長、指令室主席の3名を「嫌疑不十分」により不起訴とする決定をした。3 名は、2009年12月、山形県警庄内警察署捜査本部から業務上過失致死傷罪で山形地検に書類送検されていたものである。当研究会は、事故の真相究明の道 を閉ざす山形地検の消極的決定に強く抗議する。

2.当研究会は、2007年12月、事故現場を現地調査した。2年半で100回近くの風速規制が実施されるほどの区間でありながら、なぜ列車を止めるこ と、徐行することができなかったのか。なぜ風速計は2カ所しか設置されていなかったのか。これほど多くの列車が走る幹線区間が、なぜ今なお一部単線区間の まま放置されているのか。列車が暴風の中、100キロメートル近い速度で走ったのは、1時間以上の遅れを回復させるためではなかったのか。これらの疑問 は、事故から5年たった現在も何ら解明されていない。

3.山形県警の捜査により、事故現場を管轄するJR東日本・新潟支社の指令室では、気象情報受信用のFAXが事故数日前から故障したまま放置されていたこ とが判明している。こうした安全に対する気の緩みが羽越線事故の背景にあったことは明らかであり、JR東日本に事故の責任があったことは明らかである。当 研究会は、引き続きこの事故の真相究明を求めていく。

4.事故発生から今日までの5年間で、刑事訴訟を巡る情勢は大きく変化した。2009年5月に導入された起訴議決制度を事故の真相究明のために活用しよう という動きはすでに関西で現実化し、明石歩道橋事故では関係者がこの制度により起訴となった。尼崎事故を巡っても、井手正敬・元JR西日本社長らを自動的 に起訴するかどうかの判断がまもなく出される。そのようなときに、法理論のみを基準とした不起訴の決定は、この事故の真相究明を願う遺族・負傷者らの願い に背を向けるものである。

5.当研究会は、事故から4年を経過したこの時期に、改めて犠牲者のご遺族に哀悼の意を表するとともに、今なお治療過程にある負傷者の方に対しても、お見 舞いを申し上げるとともに1日も早いご快癒をお祈りする。そして、遺族・被害者と連携し、この事故の真相究明に今後も全力を尽くす決意である。

  2010年3月21日
  安全問題研究会

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