再びJR東日本を検証! 吾妻線ツアーを敢行

 2008年8月24〜25日、JRに安全と人権を!市民会議(略称・JRウォッチ)の主催で、駅の合理化と民営化がもたらす地域破壊を検証するJR吾妻 (あがつま)線ツアーに参加した。

 このツアーは、2007年3月に行った「もしもし券売機・Kaeru(カエル)君体験ツアー」の第2弾だ。前回のツアーでは「耳の不自由な人は使うこと もできない」「切符はあらかじめ前日に買っておかないと出発時刻には間に合わない」など、地元から悲痛な声が上がったことから、JRウォッチがJR東日本 本社に直接、改善を要請した。それから約1年半を経て、吾妻線の各駅はどのように変わっただろうか。

 JRの列車で吾妻線沿線の中心地である中之条駅(群馬県中之条町)に到着した一行は、同駅周辺の現状について話を聞いた。「前回のツアー以降の良い変化 は中之条駅がきれいになったことと、エレベーターが設置されることになったことだ」と中之条町議会の高柳議員は報告した。

 1日の乗降客が5千人を超える駅などの公共施設について、地元自治体がバリアフリー化のための基本計画を定めた場合、鉄道事業者にもエレベーター設置な どバリアフリー化への協力を義務づける交 通バリアフリー法(高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律)が2000年に制定された。中之条駅がこの基 準に達しない状況の中でエレベーター設置を勝ち取ったことは、地元住民と結びついたJRウォッチ運動の確かな成果だ。

 一方、切符の販売が「カエル君」を含む券売機だけで窓口がないことは前回のツアーの時と変わっていなかった。中之条駅では現在も切符を買うのに30分以 上もかかることがあり、駅利用客が駅前を散策する時間を取れないため、駅前商店街に人が寄りつかなくなったという深刻な実態も報告された。ツアー一行を出 迎えた国労高崎支部の関さんは、「中之条町では高校は統廃合で1校になり、郵便局は5カ所だけ。吾妻線までなくなれば陸の孤島になる」と地域崩壊への危機 感をにじませた。

 午後からは、列車で万座・鹿沢口駅(群馬県嬬恋村)へ移動。ツアー一行と沿線住民との交流が行われた。この意見交換で、住民側からは「村の財政が逼迫 し、年に50〜60万円程度の維持費も払えないため村の公衆便所がなくなった。駅のトイレは営業時間内しか使えない」「駅前のレンタカー屋も撤退した」 等、地域崩壊を裏付ける声が出た。万座・鹿沢口駅前で喫茶店を経営する高橋すみ江さんは「イベント列車を運行してはどうか」と提案した。万座・鹿沢口から 「嬬恋」への駅名改称のアイデアも出るなど、活発な意見交換が行われた。極度の合理化、利益第一主義がもたらした地域崩壊と、それを必死に食い止めようと する人々の姿がそこにはあった。

 自分で人員を削減しておきながら「人が少ないので客からの電話に対応できない」と言い、電話帳へ電話番号も掲載しないなど、公共交通としての役割を放棄 し傲慢な姿勢に終始するJRに対し、「騒ぎ続けなければJRは変わらない。これからもどんどん騒ぎ、直接本社に行こう」と確認した。
翌日、ツアー一行は吾妻線の沿線にある八ツ場(やんば)ダムの建設現場を見た。首都圏の水がめとして建設が期待されたこのダムは、激しい反対運動もあって 構想から50年経ってもダム本体の工事に入れないまま、道路建設や吾妻線水没区間の付け替えなどの周辺整備工事にようやく着手したばかり。人口減少社会の 到来で首都圏の水事情も供給過剰へと大きく変化した現在では無駄な公共事業のシンボルとなった。賛成、反対に引き裂かれた地元の村は、住民が「ダムの話を 聞くのも嫌だ」というほど疲弊し、今は八ツ場ダムから水の供給を受ける予定だった下流地域(埼玉県など)が反対運動の主流を担う。

 膨大な税金を無駄遣いし、平和だった村を引き裂き、環境を破壊してまで大手ゼネコンのために公共事業を続ける国土交通省と、そのような恥ずべき官僚のた めに「衆議院3分の2再可決」を使ってまで特定財源を用意する自民党政府…八ツ場ダム工事の現場から見えてきたのは、そんな愚劣極まりない利権腐敗政治の 現実だった。

 公共事業に名を借りた乱開発とJRの地方切り捨てはいずれも国土交通省が所管している。その意味で、今回、わずかとはいえJRウォッチが八ツ場ダム反対 運動関係者と交流する機会を得たことは大きな収穫だと思う。国土交通行政を大企業本位から国民本位に転換させるため、「カエル君」と「八ツ場ダム」を共通 の闘いにしなければならない。

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