日本航空の「年 末解雇」を許すな!


 再建中の日本航空と管財人・企業再生支援機構は11月15日、各労働組合の強い反対を押し切って、250人を対象とする整理解雇を決定した。しかしこの 整理解雇は全く道理のない不当なものだ。

●国鉄と同じ差別と見せしめ

 日本航空で行われていることは、23年前、国鉄で行われたのと同じ差別と見せしめの労務政策だ。

 差別の多くは、闘う労働組合である「日本航空キャビンクルーユニオン」(CCU)に向けられている。CCUは856人の小さな組織だが、50歳以上の組 合員140人が退職強要を受けている。一方、多数派の「御用組合」では、50歳以上の多くが管理職になっており、整理対象者はほとんどいない。

 パイロットの整理対象者に対しても、白紙のフライトスケジュールと退職に向けた面談の通知書が渡されるなどの嫌がらせが始まった。高年齢者を中心に 「残っても仕事はない」「整理解雇になったら、高齢のあなたは一番」「お客様が、年齢が高い人にサービスを受けたいと思いますか?」などと、年齢を理由と した露骨な人権侵害まで行われている。

 こうした差別と嫌がらせは、国労など国鉄「改革」に反対する労働組合員が、乗務を外され、人材「活用」センターで草むしりなどの懲罰的労働に従事させら れたのと重なる。

●目標達成でも首切りと恫喝

 さらに問題なのは、希望退職者が目標を達成したにもかかわらず、闘う労働組合を狙い打ちにした整理解雇を会社が続けていることだ。

 CCU組合員が多い客室乗務員では、660人の削減目標に対して733人の応募があり、73人も超過達成している。他の職種を合わせても、すでに目標と する1500人を上回っているにもかかわらず、会社はなお整理解雇を続けている。

 会社は、希望退職の募集中に、突然「稼働ベース」という基準を持ち出し、人員整理を強化した。休職中の労働者の応募は0人、育児・介護中で部分就労の労 働者の応募は0・5人などと数える。会社が役に立たないとみなした労働者は、希望退職に応じても実績にもならない。

  こうした人員整理のやり方は、「人員整理の必要性」「解雇回避努力」「被解雇者選定の合理性」「手続の妥当性」からなる整理解雇の4要件をひとつも満たし ていない。明確な不当労働行為である。

 企業再生支援機構は、スト権投票を実施中のCCUなど複数の労働組合に対し、「スト権が確立した場合は再建のための出資を行わない」と恫喝している。会 社更生法の適用を受けた日本航空では、管財人こそ実質的な経営支配者であり、こうした行為が労働組合法の禁ずる労働組合への不当な支配介入に当たることは 明らかだ。

 23年前の国鉄でも、人員削減が目標を上回っていたにもかかわらず、国労を解体するため、希望退職の募集が続けられた。当時、国鉄職員局で人員整理を担 当した葛西敬之は、その狙いをこう語る。「(3万人の希望退職目標に対し、応募者が)5・2万人に達しても、それは新事業体(筆者注・JR各社)の人件費 を削減することになるのだから歓迎である」「地方鉄道管理局サイドからは、(国・地方自治体などの)公的部門に転出していった者たちとの公平感のために も、最小限度の選別はやらせて欲しいという要請がしきりだった」(葛西著「国鉄改革の真実」)。

 そこには、闘う労働組合への嫌悪と、その解体に向けた経営の強い意思が見える。先に首を切った者との間で不公平だから、残った者も首を切る。このような 人員削減の再来を許してはならない。

●「高給批判」は誤り

 商業メディアは、パイロットの「年収2千万円」が経営破綻の原因であるかのような報道を続けているが、これは全くの誤りだ。

 航空労働者の業務は過酷だ。変則勤務であり、拘束時間は長い。操縦方法は機種ごとに大きく異なる。しかも、いったん離陸してしまったら、故障・トラブル が起きても地上からの支援は一切受けられない。陸上交通機関のように、一時停止して点検することもできない。千人もの乗客の命を預かり、すべての故障・ト ラブルに乗務員だけで対処しなければならないのである。航空労働者に、こうした職務に応じた待遇が保障されるのは当然だ。

●安全低下は必至

 繰り返しておかなければならないが、日本航空破綻の原因は労働者ではなく、会社を食い物にした航空行政と自民党政権、経営陣にある。1991年、日本航 空は和歌山市内の社宅用地を想定の3倍もの価格で購入させられたが、この土地の所有者は二階俊博元運輸相(自民党)の後援会幹部だった(2010年 10月27日付け「朝日」)。このような腐敗はあちこちに存在している。

 退職強要を受けた50代後半のある女性労働者は、1985年のジャンボ機墜落事故後、現場の御巣鷹山に登り、墓標に手を合わせる遺族の背を見て安全を 誓ったという。

 安全は人間、労働者が作り出すものだ。このような安全意識の高い社員を大量に退職に追い込めば、日本航空の安全は崩壊する。

●腐敗する御用組合

 日本航空のすべての労働組合が連帯して整理解雇反対の声を上げる必要があるが、JAL労働組合(御用組合)は、解雇撤回の闘いどころか、逆にCCU組合 員らの思想、病歴、性格、容姿等を記載した個人ファイルを無断で作成したとして、CCU組合員らに提訴され敗訴するなど腐敗の限りを尽くしている。経営者 による不当な首切りは、差別政策に協力する御用組合があって初めて成功することを、私たちはすでに国鉄での経験で知っている。

 CCU組合員らは、ベテランの大量退職で9月以降、職場のモチベーションが急速に下がっていると訴えている。人員削減を放置すれば、行き着く先は安全崩 壊だ。

 私たちはこの問題に無関心であってはならない。首切りと闘う航空労働者と連帯し、解雇撤回の声を上げよう。

(2010年12月25日 「地域と労働運動」第123号掲載)

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