リニア工事崩落でついに死者、さらに崩落事故 ただちに工事中止だ

 中央リニア新幹線工事現場で最近事故が相次いでいる。10月27日にリニア関連工事では初の死亡事故が起きたのに続き、11月8日にも崩落事故が続いた。

 ◎初の死亡事故

 10月27日、岐阜県中津川市の「瀬戸トンネル」建設現場で発破作業に伴って土砂が崩落。巻き込まれた作業員1人が死亡した。リニア新幹線工事での死亡事故は初めてだ。

 JR東海の発表によると、崩落は2回発生した。発破作業を行った場所の表層の土砂が崩れ落ちる「肌落ち」と呼ばれる現象だ。1回目の崩落で作業員1人が動けなくなり、別の作業員が救出に駆け付けたところ、10~20秒後に2回目の崩落が発生。1回目の崩落に巻き込まれた作業員が死亡した。

 11月8日の崩落事故は長野県豊丘村のトンネル工事現場で発破作業の準備中に発生。火薬を詰める作業に当たっていた作業員が崩落に巻き込まれ負傷した。

 驚くのは事故後のJR東海の対応だ。死亡事故が起きた場合、他の工事現場でも工事を止め、同じような危険がないか点検するのが普通だが、JR東海は山岳部の14工区で「3日程度の掘削作業の中断」を表明しただけ。瀬戸トンネル以外の現場ではさっさと工事を再開した。工事現場の基本的な安全確保にすらまったく関心を払っていない。

 情報公開に対するJR東海の姿勢も同様だ。死者を出した瀬戸トンネル事故でさえ、A4用紙1枚のニュースリリースをホームページに掲載しただけ。豊丘村の事故に至ってはホームページに掲載すらしていない。このようなJR東海のふざけた隠蔽体質こそ連続事故の根底にある。

 ◎事故は2年ごとに起きている

 実は、リニア新幹線の工事現場での大規模な事故はこれが初めてではない。2017年12月にも、発破作業の失敗で長野県大鹿村と松川町とを結ぶ県道に大量の土砂が崩落。復旧に1ヶ月かかり、崩落現場の先にある観光地は年末年始に減収になるなど多大な影響を受けた。大鹿村には国道の通行止めで燃料運搬車も入れなくなり、村民生活にも打撃となった。2019年にも岐阜県中津川市の工事現場で陥没事故が発生。事故はほぼ2年に1回のペースで起きていたのだ。

 リニア工事現場で相次ぐ事故の背景に、施工に当たるゼネコンの技術力低下を指摘する声もある。発破作業直後の十数分は肌落ちが起きやすく、また爆破の衝撃で土ぼこりが舞い現場確認もできないため、通常は「作業員を投入せず待機させる」(技術者)という。

 こうした技術面ももちろんだが、今回の連続事故には工事が大幅に遅れている現場で発生したという共通点がある。瀬戸トンネルは1年遅れ、豊丘村の工事現場は計画では2017年10~12月期に掘削開始予定となっており4年も遅れている。こうした大幅な遅れが焦りにつながったことは間違いない。

 瀬戸トンネル現場での事故は総選挙投票日の2日前に起きた。事業推進の与党とJR東海に忖度したのか、大手メディアは作業員死亡を速報後は沈黙した。今年6月の静岡県知事選でも、静岡県の反対で工事が遅れているかのような印象操作をメディアは繰り返したが、事実とは異なる。現場の最低限の安全さえ確保しないままずさんな工事が横行するリニア事業は中止が当然だ。

 ◎事業中止の闘い続く

 11月9日、リニア・市民ネット東京はじめ、首都圏・愛知・大阪の他、山梨・長野・岐阜のリニア反対17団体が連名で、リニア工事の中止などを求める要請を国土交通省・JR東海に対して行った。

 安全問題研究会も11月26日、リニア中止の要請を計画したが、驚くことに国交省は対面での申し入れ書の受け取りを拒否。安全問題研究会のリニア関係要請に対し、国交省(地方運輸局を含む)が要請書の直接受け取りを拒否するのはこれで3度目。国がいかにリニア問題を恐れているかが見えてくる。

 筆者は原発問題をめぐっても各省庁等への要請行動を行っているが拒否されたことはない。国交省は「新型コロナウイルス感染症対策のため、面談による対応は現在行っておりません。誠に恐れ入りますが、ご了承のほどお願い致します」(国土交通ホットライン・ステーション)としているが、過去2度の直接要請拒否はコロナ前であり理由になっていない。

 安全問題研究会がこのような対応に「了承」を与えることはない。事業中止の展望ははっきり見えてきたと思う。今後もリニア中止に向けた行動を続けていく。

 (2021年11月27日 「地域と労働運動」第255号掲載)

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