「民営化・格差社会を問う!ノーモアJR尼崎事故!命と安全を守れ!4.20尼崎集会

やや遅くなってしまいましたが、尼崎事故3年を前に、4月20日、尼崎市内で開かれた「民営化・格差社会を問う!ノーモアJR尼崎事故!命と安全を守れ! 4.20尼崎集会」の報告です。

主催者挨拶の後の講演は、昨年に引き続きジャーナリストの安田浩一さん。「民営化・格差社会と民営化問題」と題し、JR西日本が尼崎事故後、社内に設置し た安 全諮問委員会からの報告を受け、3月末にとりまとめた「安 全基本計画」について講演しました。
最近、労災の世界で注目が高まっている「リスクアセスメント」(注)を鉄道事業ではじめてJR西日本が導入したことに触れ、「リスクアセスメントという言 葉が一人歩きしているが、潜在的危険度を誰が数値化するのか。会社に従順な社員だけを車座集会に集め、幹部が上から災害防止の必要性だけを説くような「安 全ミーティング」を行っている会社に事故防止ができるのか。土台がガタガタの会社の上にいくら立派な建物を建てても無意味だ」とJR西日本の体質の問題を 指摘しました。

リスクアセスメントが十分に機能するためには、現場からヒヤリ・ハットの事例を含め、すべて報告されていることが必要ですが、社員が会社を恐れ、モノ言わ ぬ状態が日常となっているJR西日本で果たしてそれが可能なのか。安全基本計画では、「ヒューマンエラーは原因ではなく結果である」との考えから、事故や トラブルを会社に報告する際に「社員の取扱誤り」という報告区分を廃止すると表明していますが、一方で「日勤教育」は見直しを言明したものの、廃止は表明 していません。社員個人の責任を問わないなら、日勤教育はなぜ残るのか? 社員個人の責任を問わないまま行われる日勤教育とはなにか? まったく不可解で す。

伯備線事故(2006年1月、保線作業員が特急にはねられ3人死亡)にも触れ、「JR西日本は保線作業員用に持ち運び式ATS地上子(ちじょうし=列車を 検知する装置)を導入したが、重くて持ち運びに2人必要なため、保線の人員が減らされている中で全く役に立たず、神戸支社管内では使用実績がゼロになって いる」との驚くべき実態も指摘しました。

なお、持ち運びでない通常のATS地上子は、鉄道総合技 術研究所サイト内に写真が載っています。また、参考として特急たからが撮 影したATS地上子の写真も紹介しますのでご覧ください(持ち運び式のものはこれよりは小さいと思いますが、それでもかなり大きいと思います)。

安田さんの講演後は遺族からのビデオメッセージ。4.25ネットワークの藤崎さんは「100年経っても(JRを)許さないで、という娘の声が聞こえてく る」「事故がゼロになるまで50年でも100年でも生きていたい」と述べ、今年も変わらない決意を表明しました。

報告「安全基本計画と職場実態」は、JR西日本社員で国労の有田修さん。「安全基本計画といっても、人減らし合理化と労働強化が行われている中では全く実 感がない」と、尼崎事故を起こしたJR西日本の体質が安全基本計画発表後も全く変わっていないことを報告しました。有田さんは、「伯備線では事故が起きる 前から現場が危険を認識し、危ないと言っていた。亡くなったのが、先頭に立って危険性を指摘していた仲間だったことが本当に悔しい。危ないときは危ないと 言い続けることができる力をもっともっとつけていきたい」と決意を述べました。

報告「解雇撤回闘争と安全問題」は酒井直昭・鉄建公団訴訟原告団長。「安全問題は会社側もそうだが、国鉄労働組合にも責任がある。国鉄の英語表記はJNR (Japan National Railways の略)だった。JNRからN=公共性が抜けてJRになったが、国鉄労働組合(NRU)はNを現在も捨てていないし、これからも捨てない。国鉄改革当時、三 塚運輸大臣から現場協議制がやり玉に挙げられたが、その中でも駅の無人化・路線廃止には利用者・自治体の理解が必要なため、地元首長の合意を得るという運 用をしていた(営業体制近代化協定(営近協定)と呼ばれた)。こうしたものの復活を図っていかなければならない。最近は、JR東日本でも西日本でも会社と の協約・協定は会社の主張にほぼ近い就業規則で決まっているので、会社とケンカしながら安全を守っていくことができるかどうかわからないが、儲からなくて も安全はしっかり守る必要がある。採用差別問題と安全問題を両輪としてやっていかなければならない」と述べました。

この後、株主市民の会から集 会アピールを提起・採択して集会終了。参加者は、例年と同様、会場から事故現場までデモ行進し、犠牲者に献花して解散しました。

注)リスクアセスメント…労働災害防止のためには、災害が起きてから対処する方法では十分ではなく、災害が起きていない 日常においても潜在的な災害の危険性を数値化し、対策を講じていくことで事前にリスク低減措置を講じ、労災を防止するという手法。労働安全衛生法の改正に より2006年4月から「努力義務」化されたが(つまり達成義務は負っていない)、新しい制度であるため民間企業においてもまだ顕著な成功例はない。ま た、「なかった」ことを形にするのは難しいので、ゼロ災害が続いている事業所でも、災害防止のどの部分からどの部分までをリスクアセスメントの効果とする かの検証は難しいと考えられる。なお、リスクアセスメントの詳細については厚 生労働省サイトで公表されているパンフレットに詳しい。

 

(写真左)今年も事故現場前にJR西日本が設置した献花場には、弔問客が絶えることがなかった。
(写真右)全居住者が退去した後、JR西日本が買い取った現場マンション「エフュージョン尼崎」は処理のめどが立っていない。遺族や元居住者の間では、 「事故の記憶をとどめるため保存すべき」とする意見がある一方、解体すべきとの声もある。

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