ノーモア尼崎キャンペーン、尼崎・東京で連続開催!

〜JRの安全崩壊は民営化から始まっていた! 闘いなくして安全なし! 安全なくして仕事なし!〜

 乗客・運転士107名の貴い犠牲者を出したJR福知山線・尼崎事故から1周年を迎えたこの4月、尼崎事故の風化とJRによる一方的幕引きを許さず、安全・安心できる公共交通づくりを目指してノーモア尼崎キャンペーンが大々的に取り組まれた。
 今回のキャンペーンでは、イギリス・フランス・韓国の鉄道労働者を招請し、国際シンポジウムの形式で各国の鉄道民営化政策・鉄道の商業化政策を取り上げ、それと闘う各国の実情を報告していただくと同時に、国内からもJR社員(国労組合員)や映画「レールは警告する」の上映運動関係者などが参加し、現場での安全への取り組みなどを報告した。
 このキャンペーンは、単なる鉄道の安全向上や公共交通の復権といった課題にとどまらず、1987年の国鉄分割・民営化を安全崩壊、首切り・リストラ、利益優先主義に代表される新自由主義的経済政策の始まりと位置付けるところに目的がある。以下の報告をお読みいただければ、国民にとって最大の関心事である鉄道・公共交通の安全という課題と、国鉄労働者1047名の解雇に代表される新自由主義や「格差社会」の問題は、切り離すことのできない一体のものであることがご理解いただけるだろう。
 


<写真レポート・1>

イギリス交通労組(RMT)から招請されたイギリス鉄道労働者のピーター・スケリーさん(左)。RMTは、イギリスの鉄道の再国有化を求めて闘っている。
フランスからのゲスト、ミッシェル・デマルさん(中央)。フランスの鉄道はまだ国営だが、施設保有部門が民営化されるなど、事業の切り売りと競争原理の導入が進む。
韓国鉄道労組からのゲスト、チョ・サンスさん(右)。韓国の鉄道は、鉄道庁の直営事業から公社化され、労働条件の低下が進む。
集会参加後、海外ゲストを先頭に尼崎事故の現場までデモ行進。「政府は国民の安全を守れ!」「JRは不当労働行為をやめろ!」の声が尼崎の街に響いた。

 この日の前日、4月22日の集会、そしてこの日の集会・デモ、25日の東京でのシンポジウムを通じて、ピーターさんは「イギリスでは労組がまだ機能していて、労使の安全委員会を通して経営をチェックすることができる。これがある限り、経営のいいなりにはならない」と述べ、労働者が安全問題・労働条件に関して声を上げられる「現場協議制」の大切さを訴えた。フランスのデマルさんは、フランスの国鉄が国営を守りつつも、部門毎に民営化が進み、競争原理の導入によってコスト削減を強いられている現状を報告しながら、「鉄道はひとつのシステム。分割しては安全は守れない。競争でなく相互協力を。そして全国一律のサービスを。そうしたもうひとつのあり方は可能だ」と鉄道のシステム性と、それを一体組織として守り育てることの大切さを説いた。また、保守・革新の間で頻繁に政権交代が行われてきたフランス代表らしく、「民営化、新自由主義の流れは政権が保守であろうと革新であろうと止めることはできない。私たちは政党に頼ることなく、行動していかなければならない」と訴えた。
 一度提案された鉄道の民営化をストにより阻止した韓国のチョさんは、鉄道の「商業化」の実態を挙げながら、「鉄道は商業鉄道であることをやめ、公共鉄道へと戻らなければならない」と述べ、「悪い政策は労組の力で変えることができる。たたかおう」と呼びかけた。また、民主派と言われて一時は市民の人気が高かったノ・ムヒョン政権の評価について「日本で民主党政権ができたらどうなるかのよい見本を示すものがノ・ムヒョン政権だ」と指摘して会場を沸かせた。
 日本からもJR東日本、西日本の労働者(国労組合員)らが参加。「抵抗なくして安全なし、安全なくして仕事なし」と、会社からの弾圧を恐れず闘っていく意思を表明した。
 


<写真レポート・2>

デモ隊は事故現場に着く。JR西日本が設置した献花台には、献花に訪れる人たちの列が途切れることがなかった。
脱線した列車が飛び込んだマンション1階駐車場には、祭壇が設けられていた。
ここが、列車の飛び込んだマンション「エフュージョン尼崎」の1階駐車場だ。
そのマンションの地下駐車場を見ながら説明を受けるピーターさん(左)。
事故調査以来1年ぶりに現場に立ち、急カーブを見る。JR西日本は事故後、このカーブに60km/h制限を課しているが、事故を追及する国労組合員らは「60km/hでも危険だ」と私に打ち明けた。
一連のキャンペーンのラストとなる4月25日の東京シンポ。最後に全員で韓国の労働歌謡「鉄の労働者」を歌って締めくくる。(「鉄の労働者」の歌詞 曲を聴く(wmaファイル、2分00秒、982KB))

 今回の一連のキャンペーンに参加して、ピーターさんが述べた言葉が印象に残っている。「イギリスでは水道が民営化され、空から降ってくる雨までがビジネスの道具になってしまった」。朝起きて顔を洗うときに使う水から新自由主義のビジネスに組み込まれている。第二次大戦後、西側資本主義社会が実現した「ゆりかごから墓場まで」の福祉国家は、いまや「ゆりかごから墓場まで」の新自由主義ビジネスに道を譲ってしまったのだ。
 3人の海外ゲストたちが述べた現場協議制も、鉄道をシステムとして創り、守り、育ててゆく単一企業体制も、そして競争原理によらない相互協力と全国一律のサービスも、全て「日本国有鉄道」がかつて持っていたものばかりである。安心して乗れる鉄道にするためには、ズタズタに切り裂かれた地域JR会社制ではなく、儲けのために経営されざるを得ない株式会社でもなく、公共性を持った全国単一組織でなければならないのである。
 私は、今回のキャンペーンに参加して、日本国有鉄道の復活を目指す闘いこそ未来を約束するものだという確信が持てた。惜しむらくはこの会場に私くらいしか鉄道ファンがいなかったことである。今回のキャンペーンは単なる政治集会でなく、鉄道を考えるイベントとして、鉄道ファンから見ても興味深い内容だったように思う。鉄道ファンの中には、地域JR制に疑問を持っている人も多く、もっと多くのファンの参加を得られるような宣伝のあり方を考えることも今後の検討課題ではないだろうか。

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