踏みにじられた福島から、それでも伝えたいこと

 原発事故から3年。ここ最近、福島発のニュースで世間を賑わせたものと言えば「美味しんぼ」騒動、そして除染廃棄物の中間貯蔵施設問題を巡る石原伸晃環境相の「最後は金目でしょ」発言だ。いずれも、傷つき疲れている福島県民へ配慮のかけらもないものだ。

 「美味しんぼ」問題に関していえば、鼻血を出す人の話など事故直後は毎日のように聞いた。ティッシュペーパーの箱が空になっても止まらない鼻血に恐怖を感じ、着の身着のまま避難する人が現れた。今、政府、学会、メディア総力を挙げて「鼻血はデマ。あり得ない」と否定に躍起だが、愛郷心の強い福島県民が、住み慣れたふるさとも、家も、家財道具も、仕事も、学校も、地域の人間関係もすべて捨ててまで避難しなければならないとはよほどの事態に違いない。そうした事情を考慮せず「自主避難者がいなくなった後の福島」で取材をしても鼻血の証言など出るわけがない。あらかじめ決められた結論に沿って作為的に取材をしているメディアの報道に踊らされてはならない。

 最近の福島県民の健康被害は、鼻血など急性症状が中心だった事故直後と異なり「空咳が止まらない」「風邪を引きやすくなった」など、次第に慢性症状が中心の新しい段階に移行している。こうした慢性症状について、被曝との因果関係を証明するのは急性症状以上に難しいが、原爆症認定訴訟が勝ち取ってきた因果関係の証明などを根拠に粘り強く取り組まなければならない。

 石原環境相の発言は、政治家以前に人間としても弁明しようのない酷いものだ。確かに除染廃棄物を貯蔵する中間貯蔵施設の受け入れを表明した地域はないが、いくら設置候補地が帰還困難区域とはいえ、加害者である国・自治体・原子力ムラがひとことの謝罪もないまま「お前らはどうせ帰れないのだから、受け入れると言ってくれればカネはやる」では交渉がまとまるほうがおかしい。福島をあまりにバカにしている。

 中間貯蔵施設の運営を手がける計画の日本環境安全事業(株)は、元々「公害防止事業団」が母体で、猛毒のPCB処理を手がける特殊会社に看板を掛け替える形で発足した。取締役の1人、由田秀人氏は環境省の天下り官僚だ。この会社の発足時、PCB処理は2016年で終わる計画だったが、中間貯蔵施設を手がけることで会社の寿命は30年延びる。環境省にとって、30年後まで天下り先も安泰というわけだ。

 原発誘致にカネ、維持するにもカネ、後始末もカネ。福島原発事故さえ自分たちの天下り先の「延長」に利用する。そんな薄汚い連中に、最大の被害者の福島県民が「最後はカネ」などと言われてたまるか!

 さっぽろ自由学校講座「福島を遠く離れて」の最終回となる第5回では、こうした福島を巡る様々な問題を取り上げる。「カネの成る木」原発に群がって利益を得てきた者は誰か。無責任大国ニッポンを責任ある真の文明国に変えるために必要なことは何か。ぜひ、講座に足を運んでいただきたいと思う。

(さっぽろ自由学校「遊」会報誌「ゆうひろば」2014年7月号掲載)

管理人の各所投稿集ページに戻る   トップに戻る