福島発リレーエッセイ「被災と向き合う日常から」(1) この社会からあきらめをなくそう

 私は団体職員をしている。全国転勤の職場で、縁あって2007年から福島県に住んでおり、原発事故に遭遇した。たまたま転勤で来た福島でこんな目に遭う なんて、あまりに理不尽だと初めは思っていたが、最近は、原発社会を変えるために天が自分に与えた仕事なのだと前向きに考えられるようになった。福島原発 告訴団に関わることになったのはこうした理由からである。

 福島県民1324名を集め、福島原発告訴団が6月11日に行った告訴は、8月1日、検察当局によって受理された。東電経営陣や原子力安全委員会メンバー 個々人の責任を問うものである。

 告訴団は、これから全国で告訴人を集めることになるが、告訴団を全国化する最大の理由は、今回の原発災害があまりに巨大で被害が全国に広がっていること である。福島と「それ以外」を離反させ、被害を福島だけの話にしようとする動きに対し抵抗を示すことも理由のひとつだ。この地球に生きるすべての人類に、 原発災害を自分のこととして考えてほしいという狙いも込められている。

 福島県民が押し黙ったまま行動を起こさなければ、他地域の人たちが何か運動を始めるたび「福島県民が怒ってないのになぜあなたたちが怒っているのか」と 冷や水を浴びせられることになりかねない。福島県民こそが最も怒っているのだということを明白な事実をもって内外に見せなければならないという思いもあっ た。

 過去に政府や大企業がどんな罪を犯しても、被害者が「仕方ない」とあきらめてしまい、同じことが何度も繰り返されるのがこの国の歴史だった。私たちの目 標は、日本社会から「仕方ない」を追放することである。そのためには罪を犯した者たちを追い詰める本気の闘いが必要だ。ひとりでも多くの人々が告訴人とな り、検察に起訴を求める声を上げることがその重要な一歩となる。

 現在、告訴団は、11月の第2次告訴に向けた準備を進めており、全国から告訴人を募集している。私たちは、多くの人々とともに、被害者が一方的に切り捨 てられる社会を変えていきたいと決意している。

 (告訴団ブログ http://kokuso-fukusimagenpatu.blogspot.jp/

(2012.10.13 日本出版労働組合連合会(出版労連)原発問題委 員会 編 「原発のない未来へ」No.12 掲載)

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