2008. 1.23全動労訴訟東京地裁判決についての声明

 1987年の国鉄分割・民営化の際に国鉄清算事業団に移され、1990年、清算事業団からも解雇された1047名のうち全動労組合員58名が、損害賠償 の支払いを求め、国鉄を継承する独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構を提訴した訴訟について、去る1月23日、東京地裁民事11部は、1人あたり 550万円の慰謝料支払いを認める判決を出した。

 今回の判決が、2005年9月15日の鉄建公団訴訟第1審判決に続き、白昼堂々と行われた不当労働行為の事実を認めるとともに、これら不当労働行為が 「正当化しがたい」ものであると指弾したこと、原告ら被解雇者が「多大な精神的打撃を受けた」と認めたことは評価できる。これらは、2007年11.30 集会において、「私たちのやったことが誤りでしたという一言が聞きたい」と訴えた全動労争議団家族の声に一定の配慮が示されたものと言える。

 今回の勝利により、私たちの国鉄闘争を巡る裁判は2勝1敗と再び私たちが優位に立った。2007年6月のILO国賠訴訟は不当判決となったが、この裁判 はもともと不当労働行為の有無が争点となるものではなかった。不当労働行為の有無が直接の争点となった裁判では私たちは2連勝した。

 このことは、支配層がいかに取り繕おうとも、「敵が国鉄労働者に対して行った不当労働行為の事実は誰にも消すことができない」という厳然たる事実を改め て私たちの前に示すものとなった。国家機構の一部である裁判所でさえ、その事実を消去することはできないという事実が改めて示されたことの意味は、計り知 れないほど大きいものであり、事実として存在する不当労働行為を裁判の中核に据えた私たちの闘いの正しさは、もはや誰の目にも明らかである。

 しかしながら、今回の判決は、年金や逸失賃金に相当する賠償は認めず、単に不当労働行為に対する慰謝料額を認めたに過ぎないのであり、その意味では 「5%の勝利」と評された9.15判決の枠を一歩も超えるものではなく、私たちはこれに対し、強い不満を表明する。20年間、人権を蹂躙され、安定した生 活を送る権利と名誉を奪われ、苦しみに呻吟してきた原告らの被害を補償するには、あまりにも少なすぎると言わざるを得ないのであって、裁判所はみずから原 告らが精神的打撃を受けたと認めるなら、それにふさわしい賠償額を命ずるべきであることを、私たちは改めて主張する。

 私たちは、緒戦の勝利に浮き足立っている暇はなく、直ちに新たな裁判へ全力を傾注する必要がある。3月に判決の出る鉄道運輸機構訴訟(2次訴訟)では、 9.15判決を超える新たな地平を切り開かなければならない。鉄建公団訴訟の控訴審において不当労働行為の認定を勝ち取ることはそれにもまして重要であ る。高裁レベルでも不当労働行為の認定を勝ち取ることができるなら、私たちの国鉄闘争は勝利に向かって大きく前進するであろう。


 1987年、国鉄闘争は中曽根内閣が推進する「民活」という名の新自由主義政策とともに始まった。1047名の解雇は、グローバル資本主義を推し進める ことを決意した支配層から先鋭的労働者たちに贈られた先制攻撃だった。それから20年、いまや全労働者がワーキングプアや長時間労働の地獄に落ち、労働は 文字通りの苦役に変わった。未来ある女性たちが、救急車で病院をたらい回しにされ、普通の出産をすることさえ不可能な時代になった。このような時代に至る 入口に位置する国鉄闘争は、当事者たちが好むと好まざるとに関わらず、日本の全労働者の運命を左右する争議として闘われてきた。原告たちはこの崇高な闘い を完遂するよう、歴史によって規定されたのである。

 緒戦の二度にわたる不完全ながら本質的部分での勝利は、原告たちが、みずからの身に余る重要な任務に対し、ときに打ち震えながらも闘いによって応えてき た結果である。国鉄闘争を担う勢力の中に、一部憂慮すべき妥協的傾向も出てきているが、1047名は、これまでの闘いに自信を持ち、全労働者の未来のため に闘うという使命を再認識するとともに、確信をもって進むべき時である。要求水準を下げることなく、非妥協的に闘えば、裁判所の反国民的な和解勧告さえ乗 り越えて勝利に到達できることは、先の薬害肝炎訴訟に見るとおりである。

 当研究会が取り組んでいる、公共交通の安全を取り戻す闘いは常に1047名の闘いと共にある。当研究会は2007年、JR東日本の無人券売機の矛盾、 JR西日本の尼崎事故遺族に対する残酷な振る舞い、国土交通省による交通の規制緩和と事故との密接な結び付きを暴露するとともに、羽越線事故の原因調査を 敢行することによって、民営JR体制の決定的破綻を明らかにした。2008年は、これらの矛盾がさらに深刻化し、また北海道新幹線の建設の本格化を通じ て、切り捨てられる地方の反乱の芽をはらみながら、並行在来線問題がいよいよ大きくクローズアップされる年となるに違いない。

 当研究会は今年もこれらの諸問題に取り組み、民営JR体制がもたらしてきた反国民的で利用者不在の実態を引き続き明らかにしていく決意である。そして、 信頼と安心を乗せて走る鉄道の復権のために今後とも全力で取り組んでいくことを、改めて表明する。

2008年1月26日
安全問題研究会


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