2005.9.15鉄建公団訴訟東京地裁判決についての声明

 1987年の国鉄分割・民営化の際に国鉄清算事業団に移され、1990年、清算事業団からも解雇された1047名のうち297名が、地位確認及び 損害賠償の支払いを求め、国鉄を継承する日本鉄道建設公団(現・独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構)を提訴した鉄建公団訴訟について、去る9月 15日、東京地裁は、5名を除く292名に対し、1人500万円の慰謝料支払いを認める一方、解雇は有効であり、地位確認は認めないとする内容の判決を出 した。

 JRへの復帰を求めた元国鉄職員らの闘いが、労働委員会の場では連戦連勝しながら司法の場では全面敗北を続けてきたことを思うとき、今回の判決が わずかな金額とはいえ初めて賠償請求を認めたことは巨大な前進であり、暗黒に一筋の光となる。また、国鉄による不当労働行為及び分割民営化賛成派組合との 差別の存在をはっきりと認定したことは、原告団員らの今後の闘いを大いに励ますものである。司法での敗北によっていったんは奈落の底に突き落とされた原告 団員らを、地上の光が見えるところまで引き上げることができたのには、原告団員自らの不屈な闘いもさることながら、法廷の場で堂々と真実を対置して権力を 追及してきた弁護団の働きが大きかった。ここに弁護団に対し最大級の敬意を表明する。

 被告・鉄建公団は事実では争えないと見て、損害の補償を再就職促進法の「3年時効論」で切り捨てようとする策動に終始したが、今回の判決はこうし た策動を退け、「原告団員らがJRと闘うことによって職場復帰できる余地があった以上、JRと闘っている間に時効が進行するのはおかしい」として、時効の 起算点を2003年12月22日の最高裁判決日であるとした。これは、解雇撤回闘争の原則が原職復帰であることを踏まえればきわめて当然の判断であると同 時に、「俺たちをJRに戻せ」をスローガンにJRと闘ってきた18年間の国鉄闘争が全く正しかったことを司法の場で再確認する意義をも併せ持つものであ る。これらはいずれも裁判所が一定の見識を示したものとして高く評価する。

 しかしながら、今回の判決は、原告団の要求からはほど遠い内容であり、われわれは到底これを受け入れることはできない。とりわけ解雇を有効とした ことは、原告団員らの職場復帰の可能性を閉ざすものである。同時に国鉄と「承継法人」たるJRとの間に一体性を認めず、国家による「偽装倒産解雇」戦術に 対し批判的検討を加えることなくこれを追認したことは、不合理な首切り・賃下げの横行に苦しむ日本の労働者に背後から矢を放つものであり、怒りをもって糾 弾する。

 今回の判決はこの点において、18年間、人格を否定され、人生を狂わされ、苦しみの中で生きてきた原告団員らの損害を回復するものとは言い難い。 原告団員らの闘いは、踏みにじられた名誉を回復し、奪われたものを取り戻すことを目的とするものであり、今回の判決はそもそもの要求水準に比べれば第一歩 でしかない。原告団員らの闘いはこれからも続くであろう。

 公共交通は安全が最も重要であり、利益とは別の価値基準によって運営されなければならないが、そのことを最も悲劇的な形で示したのが今年4月25 日の尼崎でのJR脱線事故である。企業が私的所有である限り、目先の利益のみを追求し金にならないものは切り捨てようとする。鉄路の安全、そして安全のた めに発言し行動する労働者は企業にとって金にならない存在であるが故に切り捨てられたのであり、107名の死者と1047名の被解雇者はともに民営化の最 も象徴的な犠牲者である。1047名を勝利させることが鉄路の安全を復権させることにもつながるものと信ずる。

 当サイト管理者は、鉄道ファンの立場から国鉄分割・民営化に異議を唱え、民営化と正面から対決するこの訴訟を支援することが公共交通の復権につな がるものと信じ、物心両面にわたって支援してきた。鉄道は社会資本のひとつであり、鉄道ファンはそれ故に自らの趣味の対象である鉄道を自らの個人的所有の 下に置くことができないという意味で、他の趣味を持つ者と決定的に異なっている。社会から隔絶して趣味活動を行うことができない鉄道ファンはそもそも社会 的存在であり、社会資本としての鉄道を良くする社会的使命を負っているのである。

 当サイト管理者は、18年に及ぶ国鉄闘争を一刻も早く勝利解決させ、一鉄道ファンに戻りたいと考えているが、残念ながらこの判決内容では解決には ほど遠く、闘う原告団員らの支援をこれからも続けて行くことがどうしても必要である。鉄道ファンの社会的使命を自覚し、国鉄闘争の勝利的解決と安全な鉄路 の復権を果たすため、引き続き揺るぎない決意で鉄建公団訴訟を支援していくことを表明する。
 

2005年9月17日
                     Webサイト「闘争団とともに 人らしく」
管理者 特急たから


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